30度側臥位の誤解から学ぶ

誤解の原因

 真田弘美編
褥瘡ケア完全ガイド
(2004 学研)
1)Seiler WO et al.:Influence of the 30 laterally inclined position and the Super-Soft 3-pieces mattress on skin oxygen tension on areas of maximum pressure-implications for pressure sore prevention,Gerontrogy,32,158-166,1986.より
 左のイラストで示される30度側臥位が誤解されて広められていることは、「30度側臥位の誤解と予言」のページに書きました。

 東大・金大褥瘡・創傷研究グループによると30度側臥位が勧められる理由は、以下の通りです。

  「30度側臥位は骨突出のない殿筋で圧迫を受けることができ、褥瘡発生の危険を少なくできます。」

 根拠となる文献は、接触圧が最大となるところの組織の酸素分圧を測定した結果について述べたものです。

 直接的に褥瘡の発生頻度を見たものではありません。

 組織の酸素分圧が低下したら、褥瘡ができるだろうという推測の元に、30度側臥位を勧めています。

 詳しくは、ここに書きました。

 これは一般意味論で書いたように、「思いこみの世界に飛び込む」です。

 飛びこんではいけません。

 「ひょっとしたら、組織の酸素分加圧が低下すると、褥瘡ができやすくなるかもしれない」と考えて、実践の中で確認することが「科学的態度」です。

 人間の体のことですから、まずは自分の感覚で確かめてみることが必要です。

 それをせずに、20年前の論文に書いてあるから真実だと思いこみ、褥瘡についての20年間にわたるケア、治療、器具、社会制度の変化に気づいていません。

 次のページに実験を、示します。 自分の体で試してください。

 他人の体を動かすだけで、自分の体で試さない人は理解できません。

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