為すこと・すること・起こること

 グルジェフの言葉を、サイバネティクス、システム理論、現代心理学の知識を元に、言い換えてみました。



 人間は機械だ。


 人間は、「周囲」からの刺激に対して反応しているのです。

 人間は「周囲」とのあいだで、インタラクションを繰り返す、フィードバックを与えあっているという点で、反応する機械なのです。

 人間は「周囲」とともに、サイバネティク・システムを作っていると言えます。

 彼の行動、行為、言葉、思考、感情、信念、意見、習慣、これらすべては外的な影響、外的な印象から生ずるのだ

 人間のいかなる判断も行動も、内部から生じるものはありません。

 すべては自分の外側から来たものに対する反応として、生じてきます。

 刺激がなければ、意識さえもなくなってしまうのです。

 人間は、自分自身では、一つの考え、一つの行為すら生みだすことはできない。

 ですから、自分の内側から自発的に考えたり、行動しようという衝動は出てきません。

 「自分以外の存在」があるから、考えたり、行動しようとしたりするのです。

 人間は自分の存在さえも、「自分以外の存在」=「周囲」=「環境」に負っているのです。

 彼のいうこと、なすこと、考えること、感じること、これらすべてはただ起こるのだ。

 人間の感覚と、それに基づく行動は、自然に起こることです。

 意図的に何かをしようとして、できるものではありません。

 「周囲」との関係で行動・判断は影響されますから、自発的、意図的にすべてをコントロールできるものではありません。

 人間は何一つ発見することも発明することもできない。

 発見するためには、「周囲」に発見される「もの」がなければなりません。

 発明するためには、「周囲のもの同士の関係」に気づかなければなりません。

 すべては、自分の中ではなく、「周囲」と自分の関係にあります。

 すべてはただ起こるのだ。

 ですから、自分から何かをするということはできません。

 すべては周囲との関係の中から起こってくるのです。

 ……人は生まれ、生き、死に、家を建て、本を書くが、それは自分が望んでいるようにではなく、起.こるにまかせているにすぎない。

 誕生、生存、死、建造、執筆。すべて「周囲」との関係で行なわれます。

 単独でできることはありません。

 自分と「周囲」の関係から、起こってくることです。

 すべては起こるのだ。

 人は愛しも、憎みも、欲っしもしない。

 それらはすべて起こるのだ。

 人間の「感情」さえも、自分の中から出てくるのではありません。

 「感情」は「周囲」から受けた刺激に対して反応することです。

 自分が起こした反応を新たな刺激としてうけとると、反応が増大します。

 つまり、ポジティブ・フィードバックがかかると、激情になります。

 感情が高まったときには、まるで自らの内部から感情が出てきたように思っています。

 しかし、実は「周囲」からの刺激に対して反応し、ポジティブ・フィードバックをかけているのです。

 人間の中から、最初に感情が生まれてくるのではありません。

 愛も、憎しみも、欲望も「周囲」からの刺激により惹き起こされるのです。

 すべて起こるのです。


 ねっ、それらしく聞こえるようになったでしょう?

 グルジェフはね、知っていたんですよ。

 いろんなことを。

 でも、わかりやすくは説明しなかった。

 「このくらいわかりづらく表現しても、理解できる人間にだけ理解されるのがよい」と考えていたんだと思います。

 グルジェフ・ワークという体験から気づける人にだけ理解できるような表現をしたのです。