さあさんの介助論

 もちろん、そうするのは「自然な動き」に関する基本的な問題がない場合です。

 被介助者がモタつくようであれば、動きを誘導するでしょう。

 そして、彼がせくようであれば、腰を据えて、ブレーキをかけなければなりません。

 残念ながら、このような状況は、あなたが想像している以上に頻繁に起きることでしょう。

 こうした現実こそが「自然な動き」をを再現するすることに神経を払う介助者を育てるのです。

 それ故、「自然な動き」の再現に強ければ強いほど、理想的とは言えない状況においても自分の能力を発揮するチャンスが拡がります。


 すべての被介助者と介助者がこのような問題を抱えているわけではありません。

 理想は素晴らしい人のカップルが、つまり、被介助者と介助者とが「いっしょの動き」全体を創造性の極致に導くような強力な気持ち良さを生み出すことです。

 幸運にもそれは起こり得ないことではありません。

 しかし、協調の精神がなくてはどうにもなりません。


 最悪の状況は、素晴らしい介助者と被介助者が2人揃っているにもかかわらず、そのうちの人が、あるいは2人ともが気持ち良さが生まれるべきポイントに一緒に行くことを拒絶するような場合です。

 これもまた、よくあることです。

 被介助者との「いっしょの動き」を始めたら、瞬時に状況を判断しなくてはなりません。

 彼の動きが遅いか、速いか? 

 それとも、ジャストなタイミングでいっしょに動いているのか? 

 人間のような動き方で、その被介助者は動いているか?(もちろん、そうに決まっています!)


 目の前にいる彼の「動き」をしっかりと識別し、それに合わせて動いてみましょう。

 キネステティクの本やビデオを紐解けば、素晴らしい「自然な動き」のお手本は数多く書かれています。

 その「動き」を再現しよく味わってください。


 今、実際に目の前で行なわれている「動きのパターン」に自分を適応させる術を学びましょう。

 人によっては自分自身の発想を拡げること、そして、自分の理想を妥協せず求めることが何よりも大事だと考えている場合もあります。

 しかし、できる限り多くの、そして、違った「動きのパターン」を学び、それから、独自の世界を創造すれば良い、と思います。


 人間として生きるには、他人に自分を適応させる柔軟性が必要です。

 何故なら、十中八九、誰も自分に合わせてくれようとはしないからです。

 もちろん、余計な心配をすることなく被介助者といっしょに動くことができる時もあるでしょう。

 その時は「自然な動き」を再現するのに躍起になることはありません。

 「気持ち良さ」が、すでに生まれていることがわかっていれば、そんなことを気にすることなく、自由な気分で動けます。

 それこそがこの世で「最高の経験」と言えるでしょう。


 キネステジア(動きの感覚)によって、その能力を与えられている自分を知り、今までできないと思っていた動きもできてしまうでしょう。

 そして、「気持ち良さ」の楽園というトランス状態に入り込むことになるでしょう。

 その感触をたっぷりと味わってください。

 何故ならそれ以上に素晴らしいことなど他には存在しないからです。