さあさんの介助論

 介助者として成功するためには、まず、「自然な動き」を再現する能力が必要です。

 このページを見つけた人なら、私が「自然な動き」を再現するという点にうるさい人間であることを承知しているでしょう。

 「自然な動き」を再現することを期待することができないような介助者が、今後、仕事にありつけなくなるだろうことをしっかりと認識してください。

 「自然な動き」の再現が良過ぎたためにクビになったなどという話はまず聞いたことがありません。


 普段、皆さんは「自然な動き」の練習に自分の「体の感覚」を使っているのではないでしょうか?

 自分の「体の感覚」を使うと自分の癖しか身につかないという意見もあるようですが、私はそうは思いません。


 人間である以上、私達は人間が持つ不確かさから逃れることはできません。

 他の人間と動く時、この不確かさの要素は増大しますが、それ故に活き活きとした、人間的なフィーリングが生み出されます。

 自分の「体の感覚」を使って「自然な動き」の感じを養うことが機械的な「自然な動き」に縛られたゾンビを作り出したりはしません。

 逆に、体の中の「自然な動き」の能力を高め、その結果、介助者に必要な基礎能力が身につくのです。

 
 しっかりとした「自然な動き」を再現する力を養うためには、次に被介助者との兼ね合いを学ぶことが必要です。

 被介助者と歩調を合わせることに神経を使わなければなりません。


 被介助者も同じように「自然な動き」に関する責任を担っています。

 つまり、介助全体の気持ち良さを維持するのは「自然な動き」に預かる介助者・被介助者双方の役目なのです。

 私はすべての介助者、そして、すべての被介助者がこの責任を全うしてくれると考えています。

 しかし、また残念なことに、この点に関する意識が双方に欠けている場合が多いのは確かです。

 被介助者・介助者の共同作業の第一の優先課題は「自然な動き」を再現することです。


 もし、すべての介助者が「自分の動き」ばかりを気にしていたら、気持ち良さなど生まれるわけがありません。

 すべての被介助者が気にかけていることが、自分のやりたいこと、やりたくないことに限られている場合も同様です。

 協調の精神をもって被介助者介助者双方に参加してもらいたいのです。

 被介助者の助けなくして、介助者1人が素晴らしい介助を行なうことなど不可能です。


 しばしば、アプローチの方法に微妙な調整が必要となります。

 被介助者が違えば、「自然な動き」をつむぎ出す方法にも違いがあるからです。

 介助者、あるいは被介助者・介助者双方の気持ち良さに自分を合わせる力量を被介助者が持っている場合もあります。

 しかし、多くの場合、合わせるのは介助者だと考えてください。

 口でだけ指示するよりも、一緒に動くのが一番です。