触覚について

 多くの人が、「自分は『世界』を直接感じている」と思っています。

 では、いわゆる五感について、調べてみましょう。

 触覚では、ものに触れていることを感じます。

 人間の皮膚はすべて、表皮という角化した細胞で覆われています。

 ですから、皮膚の表面に受容体はありません。

 指でカップの表面を触れてみましょう。

 なにやら、触れたときに感じます。

 その「感じ」はどこに感じていますか?

 ほんのすこし、軽く触れると、いつもとは違うように感じるかもしれません。

 圧として感じるかもしれません。

 その「感じ」は皮膚の外ではなく、「内側」ではないでしょうか?


 触覚の受容体は皮膚の中にあります。

 カップの表面を詳しく知ろうとして、軽く指を滑らせることもあるでしょう。

 指先の指紋の凸凹が、机の表面とすれて、小さく不連続に動くので良く感じられるようになります。

 なぜでしょう?

 それは触覚は力学的エネルギーにより生じるからです。

 指先がカップに触れたり、カップをなでたりすると、指先に「力」がかかります。

 この「力」は自分の力だったり、外部からの力だったりするのですが、いずれにせよ指の外側からかかる「力」で組織が歪みます。

 この歪みが触覚の受容体に「力」として伝わります。

 触覚の受容体では、この「力」により、細胞の内部の電位が変わります。

 つまり、外部からきた「力」が受容体内部の細胞の電気的変化を作ります。

 この「変化」が電気信号となって神経から脳に伝えられます。

 触覚は体内の歪(ひず)みを感じています。


 触覚は「外側の世界」の「物理的エネルギー(力)」が引き起こした「内側の世界」の「変化」を感じていることになります。