今まで見たように、マツトレスの選択については、あまり説得力のあるエビデンスはありません。
何よりも、患者さんの「動きの評価」についてまったくコメントがありません。
それぞれの試験で「動き」のアセスメントがされていないのです。
また、体位変換をする人の技量についてははっきりしたことは書かれていません。
どんな研究でも体位変換する人の能力が大きく関与するはずなのに。
AHCPRのガイドラインは、褥瘡について科学的な評価をしようとした考え方は良かったのです。
しかし、人間の体にできる損傷を対象とするのに、ケアする人間の技量を無視してしまいました。
協力したアメリカのETや、看護協会への遠慮もあったのでしょう。
このガイドラインに従えば、人間を数値で評価することだけが研究だと思ってしまいます。
そして、その通りに研究した人は大勢いました。
日本の看護師の研究も同じ轍を踏みました。
もうひとつ、問題なのは、流動的なマットレスに乗せたときの弊害についてほとんど記載がないことです。
このガイドラインでは、体位変換の技量を磨くより、とにかく流動的なマットレスに乗せれば、褥瘡は予防と治療ができると考えてしまいます。
実際にそう考えて実施し、腰痛を訴える患者さんと、動きの低下した患者さんを見て、私は反省したのでした。
こうして、AHCPRのガイドラインはバイブルから、参考書になりました。
エアマットレスやウォーターマットレス、さらにフォームも「動き」を邪魔します。
このことをしっかり教育しないと、人間の特質を無視するケアになってしまいます。
人はなぜ、褥瘡になるのか、何が人間の意識を高めるのか、自己実現とは何かを問うならば、「動き」を無視してはいけません。
キネステティクス的褥瘡ケアを読んでください。
|