90度ルール

 AHCPRでは、アラインメントを良好に保ちなさいといいます。

 良好なアラインメントを保つことはは、「機能」を大切にすることです。

 活動しやすいことが判定の基準です。

 外見が良くても、活動できないものはよくないのです。

 ところが、90度ルールというのがあって、「座位のときには、股関節を90度、膝関節を90度にしなさい」と指導されます。

 ちょっと、実験してみましょう。用意するものは、小さなタオルを一本です。

実験

1. 背当てのついた椅子に座ってください。

 まず、頭の重さがそのまま座面に落ちるように楽に座ります。

 そのときに自分の骨盤のどこに重さがかかっているのかを感じてください。

 坐骨結節に重さがかかるでしょう。その坐骨結節の前側、真中、後側を感じてください。

2. つぎに、深く腰掛けて背中を背当てにつけます。楽ですよねぇ。

 そのときに、坐骨結節のどこに重さが移ったでしょう?

 そのときの腰椎の感じはどうでしょう?

 たっぷり時間をかけて感じてください。

 まだ、楽ですか?

 前にずり落ちるように感じませんか?

3. 用意しておいた小さな
タオルをたたんで、大腿の下に入れてください。

 ずり落ちるのは止まるかもしれません。

 重さは坐骨結節のどこにかかりますか?

 重さは仙骨のほうにかかりますか?楽ですか?

4. タオルを大腿の下から抜いてください。

 今度は、骨盤の上にちょっとかかって、そこを前方に押すように腰椎の後にいれてください

 重さは坐骨結節のどこにかかりますか?

 骨盤の角度はどうなっていますか?


 人の体のケアをするには、自分がその人に今、なにをしているのかを知らなければなりません。

 目で見て分かることもあります。90度は目で見て判定するものです。

 しかし、同じく、90度に見えても、体の中で起こっていることは違うかもしれません。

 また、腰椎の圧迫骨折で亀背になった人は、いわゆる90度ルールを適用できません。

 そのときにも、手を当てることで、その人の体に聞いてみることができます。

 みんながすぐにうまく、「手で聞く」ことができるわけはありません。

 しかし、「目で見て」90度で判定している限りは、「手で聞く」ことはできません。

 まだ、「股関節と、膝関節は90度に保つのが良い」と指導するのでしょうか?