体位変換は2時間ごと?2


 さて、これで「体位変換を2時間ごとにしなさい」と言われていることの根拠がわかりました。

 ところが、その根拠としている文献に対する評価はとても低いのです。


 ひとつめの報告は、効果を比較する対照群が適当でなく、統計学的な検討もされていないとみなされています。

 ふたつめの報告は、小さな体位変換で十分かどうかを確かめようという試験ではありません

 「大きな体位変換に小さな体位変換を足したら、さらに効果が高まるか」という試験です。

 これは「2時間ごとの体位変換」の有用性の試験ではありません。

 さらに、この試験では対象の数は19名と少なすぎるうえに、ケアする人の「感覚」の問題が解決されていません。


 自分が被験者になってケアされてみると、「小さな体位変換」を効果的に行うには、接触と体の緊張についての理解が必要なことが体験として理解できます。

 誰がやっても同じではありません。

 その教育なしに行われた試験の結果は信頼できるものではありません。

 後者の試験を「2時間ごとの体位変換」のエビデンスの評価対照にしたことは、AHCPRの誤りです。

 ついでに、ヨーロッパでガイドラインを作っているEUROPEAN PRESSURE ULCER ADVISORY PANEL(EPUAP)のガイドラインの見解を見てみます。

 Frequency of repositioning should be consistent with overall goals. [C]

 体位変換の頻度は全体的な目標にあわせるべきである。(エビデンス強度C)

 2時間ごととは書いていません。

 「2時間ごとの体位変換」と指導することの根拠は結局、1975年のあやふやな試験の論文だけです。

 これをケアの根拠とできると考えるかどうかは、あなたにまかされています。

 このような問題提起をすると、「じゃぁ、どうすれば良いんだ!無責任だ!」と怒る人もいます。

 でも、考えてみてください。

 ケアはマニュアルやガイドラインにしたがって行うべきものなのでしょうか?

 自分がケアされる立場になったら時に、2時間ごとと指導されているから、2時間ごとに体位変換して欲しいのでしょうか?

 AHCPRのガイドラインには、少なくとも2時間に一回と書いています。

 ということは、もっと頻回に体位変換を要する人もいるはずなのです。

 しかし、それより多くする判定方法を書いていません。

 なにを判定手段にすればよいのでしょうか?

 「2時間ごと」と時間を基準に決めている「考え方」が人間的ではないのかもしれません。


 じっと手を見てください。自分の行動の責任は自分でとらなければなりませんから。