30度ルール

AHCPRの褥瘡予防のガイドラインのMechanical Loading and Support Surfaces 「力学的負荷と支持面」の4番目はSide-lying Positions「側臥位」です。

Side-lying Positions 側臥位

When the side-lying position is used in bed, avoid positioning directly on the trochanter. (Strength of Evidence = C.)

ベッドで側臥位とするときには、大転子に直接重さがかかることは避ける(エビデンス強度C)

Rationale. 根拠

Studies that have measured the effect of various side-lying positions on interface pressures and transcutaneous oxygen tension report higher interface pressures and lower transcutaneous oxygen tension when subjects are positioned directly on their trochanters than when positioned off at an angle (Garber,Campion, and Krouskop, 1982; Seiler, Allen, and Stahelin, 1986).

 Garber, Campion, and Krouskopは1982年に、Seiler, Allen, and Stahelinは1986年に、接触圧と経皮的に測定した酸素分圧に対して側臥位が与える効果を報告した。

 それによれば、直接大転子の上に重さがかかるほうが、角度をつけたときよりも、接触圧が高まり、酸素分圧は低くなった。



 「大転子に重さがかかるから、90度側臥位はよくない」といわれます。

 「大転子に直接重さをかけないほうが良い」というのは、臨床的にも妥当なことですから、こんな実験に頼らなくともわかることです。

 ここで問題なのは、このような「根拠」を挙げることは、「計測することが科学である」という「誤った考え方」が表れていることです。

 人間を扱うときには、「感覚」を通して相手の体に起こっていることを知ることが大切です。

 しかし、ここでの根拠は圧測定器という機械と、酸素分圧計という機械です。

 その実験結果が臨床にそのまま当てはめられています。

 このような人間と言うものの理解を誤った「科学的根拠」をケアの根拠にする人は、ケアされる人に触れる必要はありません。

 距離をおいて、数値を目で見て判定すればよいのです。

 すると、「側臥位は30度」と目で見た形で指導されることになります。

 しかし、本来は「側臥位を取らせたときは、手で触れて組織の状態を確認して、ケアされる人の大転子やその周囲の皮膚の血流が悪くならないように配慮しなければならない」と指導されるべきではないでしょうか?

 人に触れることから得られる情報を大切にするということが指導されれば、いわゆる「体圧測定器」も「経皮的酸素分圧測定器」も必要ありません。

 コストも下がるし、器具の管理も不要になります。

 なによりも、ケアされる人も測定器で触れられるより、人の手で触れられるほうが気持ちよいでしょう。

 もちろん、接触についての理解をしている人がケアする限りはですが・・・。

 大切なのは、90度とか30度という数値でも、座っている見かけでもありません。

 そこで何が起こっているかを感じることです。


 「側臥位」については、キネステティクス的褥瘡ケア解説にも書いています。参照してください。