ヴィゴツキーの内言論

思考と言語 新訳版
柴田義松 訳
新読書社 2001
¥3500
ヴィゴツキーは、旧ソヴィエトの児童心理学、教育学者です。この人は、天才です。2つの大学を同時に卒業して、高校の教師をちょっとやった後、27歳でソヴィエトの心理学会に登場し、翌年には中心的存在になりました。そして、38歳でなくなりました。
 
 子供の発達心理学では、「20世紀心理学の巨人」と呼ばれるスイスのピアジェがいます。

 ピアジェは観察に基づく、児童発達学を作り上げました。

 ピアジェは、子どもには、「自己中心的な言葉」を発する時期があることに気づきました。

 「自己中心的な言葉」は、いわゆるジコチューとは違います。

 幼児に「お人形を貸して」と言うと、「お人形さんは『行きたくない』って言ってるの」と、貸してくれないことがあります。

 これが、「自己中心的な言葉」です。

 この幼児は、「お人形さんを貸さない」と自分の言葉を話しているのではありません。

 お人形さんの言葉を伝えているのです。

 この幼児には、自己と非自己の区別がありません。

 ですから、自分と大人、自分と人形の区別がありません。

 そこで自分と人形を同化して、人形の言葉を話します。自分を中心にした表現になるのです。

 これが幼児の自己中心的思考の混同心性です。

 いわゆるジコチューという、自己への利益優先型の人格とは違います

 わかりづらいですね。ピアジェ自身も、この「自己中心性 egocentric」という命名は、誤解を招いたと反省しています。