理論の不完全性


 仮説と実践のフィードバックの中でもまれた理論も完全ではありません。

 なぜなら、実践の中で仮説の妥当性の評価は、評価するためのツールの性能に左右されるからです。


 多くの物理学の理論は、発表当初は認められませんでした。

 その理論の真偽を判定するツールがなかったからです。

 現在の素粒子論でも、未だに理論のみで証明されていないものがたくさんあります。

 物理学では、理論が発表されてから、その理論を検証するための装置や方法論が開発されて進歩してきました。

 途中で修正されたものもあります。


 また、新しい実験方法が道具として使えるようになると、従来は顧みられなかった理論も証明されるようになります。

 どんなに妥当に見える理論も、仮説の域を出ないでしょう。

どんな理論にもその前提に、「現在の技術で測定できる限りは」がつくからです。

 なお、理論的に矛盾の存在しない体系の中では、その体系自体の妥当性は証明されないことが、ゲーデルの不完全性定理で証明されています(「一般意味論」に書きました)。