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潜在抵抗の発見 |
フロイトは、ライヒの優秀さを認めて、1924年にウィーンに開いた精神分析研究所の教育担当研究員に選びました。
そこでライヒはセミナーを開き教育に当たりました。
ライヒは従来の精神分析で「失敗した症例」に興味を持ちました。
ライヒは精神分析をしたときには、自由連想法によりクライエントの背後で話を聞いていました。
話を聞くうちに、クライエントが分析医に、「転移」をすることで、クライエントの「抵抗」が無くなり、分析が進みました。
しかし、それでは分析が進まない症例があるのです。
ライヒは、クライエントの後ろで聞くことをやめ、横に座り、神経症の陰に隠れているクライエント自身と対話するようにしました。
すると、ライヒは、繰り返しクライエントの抵抗にあいました。
抵抗自体は新しいことではありませんでした。
しかし、クライエントの感情がライヒに「転移」することで、「抵抗」を乗り越えていたはずなのに、また「抵抗」に遭うのです。
一度乗り越えたはずの「抵抗」が、繰り返して出てくることは、当時の精神分析では理解しがたいことでした。
ライヒは、クライエントに面と向かって、言いました。
「あなたは抵抗している。」
そして、クライエントがどんな態度をとっているのかを、クライエントに詳しく描写してみせました。
いっしょに働いていた人々は、ライヒのやり方に文句を言いましたが、ライヒは続けました。
そうしているうちに、抵抗がやむと、クライエントの神経症の根本にあったものが、見えてきました。
心の中の「葛藤」がはっきりしてくることに、ライヒは気づきました。
そして、この抵抗が乗り越えられると、クライエントの態度が変化し、人間全体が機能的になり、真に意味での好ましい転移、陽性転移が起きました。
このことからライヒは、次のように結論しました。
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「はじめに起こった陽性転移は、実は痛いところに触れられないように防御していた一種の抵抗であった。
これは後になってから、はっきりしてくる潜在抵抗である。
治療の初期に本当の陽性転移が起こっていない。
抵抗が分析されると、「性格」が変わりはじめる。
このことは、症状が神経症の表現であるだけでなく、性格そのものが神経症であることを示している。」
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この新しい考え方による分析に、「性格分析」という名前を付けました。
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