あなたが患者さんであれば、病院の待合室を見たときに、まず受付窓口を見るでしょう。
何人待ちかが注意の焦点です。
あなたが看護師であれば、もっとも具合の悪そうな人を探すかもしれません。
あなたが医師であれば、なんにでも文句を言いそうな人を探すでしょう。
どんな病気より扱いの難しい患者さんだからです。
このときに待合室の中の人や窓口は「図」です。
待合室の中の人々に探りを入れているということは、注意を払っているということですから、それが「図」なのです。
待合室の例では、あなたの役割によって待合室の中のどんな人に注意を払うかは異なりました。
つまり、「図の意味」は、あなたが何であるかによって変わりました。
あなたが何であるかは、「地」です。
つまり、「図の意味」は「地との関係」で決まります。
このことをパールズは、「ゲシュタルトにおいて、図の意味は、『図と地の関係』、つまり『図と地の境界』のことである」と言います。システムという考え方を使うと、「そのものの意味は、そのものの中にはなく、そのものが環境と交わすインタラクションにある」ということになります。
左の「図」は黒か白かではなく、「地」との境界が鮮明になったときに意味を示します。
ゲシュタルト療法では、他の人間性心理学と同様に、セラピストはクライエントを評価しません。
セラピストの興味はクライエントの中にはありません。
なぜなら、クライエントという図の意味はクライエントの中にではなく、クライエントが環境と交わしているインタラクションにあるからです。
