ストーマケアと心理


 この人間性心理学に、流れている「今、ここ」の考えの源流は、哲学の中の実存主義です。

 ヨーロッパの哲学は、ギリシア哲学から、カント、ヘーゲルという哲学者のドイツ観念論と言われる哲学に流れていました。

 観念論では、絶対的真理、善、美というものが存在すると考えていました。

 それらの抽象的で実体を持っていない「観念」を中心に人間の生き方を考えていました。

 ヨーロッパの精神世界に大きな影響を与えていたキリスト教にとって、絶対的真理は、「神」そのものです。

 ですから、哲学者でさえ、「人間は神の御心に従って、『正しい生き方』、『道徳的な生き方』をするために生まれてきた」と考えていました。


 そんな哲学では「人間」は苦しくなります。

 それに気づき、ニーチェが「ツアラツストラ、かく語りき」で、「神は死んだ」と書き、ヨーロッパを支配していた神の存在を否定しました。

 ハイデカーは、人間は真理も目的も知らずに、この世に放り出されるように生まれてくると言いました。

 このようにして、人間の主体を「神」から「人間の存在」に取り戻そうとして実存主義哲学が生まれました。


 時を同じくして、フロイトが「無意識」を発明しました。

 人間に理解不能な出来事は、「神の御心」ではなく、「人間の無意識」から出ていると考えられました。

 この実存主義と、無意識の発明が、人間性心理学の母胎となりました。