視覚心理学

 これは視覚心理学の本に出ていた実験です。

 どうでしたか?

 色の名前を言うだけですから、簡単なことでしょう?

 文字がなければね。


 「そこに『見えている色』の名前を言うのであって、書かれた『言葉』には意味がない」と理解していても、「習慣」が邪魔をします。

 「色」という「内言」は「外側の世界」からくる感覚よりも、頭の中に記憶されている「色の名前」の作用を強く受けてしまうのです。

 「言葉」があると、習慣的に、そこに「意味」を見つけだそうとします。

 「言葉」にコンタクトしたとたんに、その「意味」を考えてしまいます。

 人は「そのもの」を直接感じようとせず、「言葉」で知ろうとします。

 
たとえ、記号が書かれていても、その意味が分からなければ邪魔されません。

 今の実験では、色の名前を漢字で示しましたが、ロシア語のキリル文字(ЖЦЩйфなど)で書いてあれば、まったく邪魔されません。

 「言葉」に刺激される習慣的行動としての思考が行動を妨げています。

 「思考」のために、やりたいことができなくなっているのです。

 今、行なった実験でわかるように、「言葉」という「記号」は人間の思考、判断に深く根を下ろし簡単には逃れられないほど、染みついています。

 ヴィゴツキーの内言論
で紹介したように、人は頭の中の言葉、「内言」で考えます。

 
ですから、「言葉」の使い方がまずいと、他の人と話をするのに困るだけでなく、自分の頭の中で考えるのにも不自由なことになります。