1.地図は現地ではない


 「リンゴ」というのは、「り」「ん」「ご」という音の集まりです。また、「文字」です。

 それは「言葉」でもあります。

 音、文字、言葉としては存在しています。

 しかし、「リンゴ」という実体は、ここにはありません。

言葉はそのものではありません。

 かつて、ネス湖にネッシーという怪獣がいることになっていました。

 しかし、作り話だと分かりました。

 ネッシーという「言葉」があるために、実体があると思った人は世界中にいました。

 アメリカは「イラクには大量破壊兵器を持っている」証拠があると言って、2003年3月19日、イラク戦争をおこしました。

 イラクで多くの市民が血を流し死んでいきました。結局、大量破壊兵器は見つかりませんでした。

 文字として紙に書かれた報告や、承認の言葉は、実体ではありません。

 それが実体を的確に表現しているかどうかについては、確かめなければなりません。

 「言葉は上手に使わないと、戦争を引き起こす」とカーシブスキーが言ったとおりのことが、未だにくり返されています。

 地図は土地の特徴を示しますが、土地そのものではありません。

 同じように「言葉」と「実体」は同じものではありません。