肉芽に対する誤解


 日本皮膚科学会のホームページの「市民のみなさまへ」から「皮膚科Q&A」を見ると第22回「とこずれ」のQ9に「褥瘡の病期分類」の解説があります。

 そこに褥瘡を黒、黄、赤、白の4色の時期に分けて、説明しています。

 「赤色期は肉芽組織と呼ばれる血管に富む組織が欠損した部分を埋めるために成長してくる時期です。

 肉芽組織が盛り上がり、周囲の皮膚との段差がなくなると周囲皮膚から表皮化が始まります

 この時期を白色期と言います」

 と書かれています。

 わたしは賛成しません。

 褥瘡もここにお見せした「深い傷」と同じ治り方をします(「褥瘡の発生」を参照)。

 「肉芽組織が盛り上がり、周囲の皮膚との段差がなくなると周囲皮膚から表皮化が始まります」という治り方はしません。

 段差がなくなるまで肉芽が盛り上がる必要はありません。


 段差をなくして表皮が伸びやすくするために肉芽が出てくるのではありません。肉芽の役割は収縮することです。


 多くの人が「表皮が伸びてくる」と思っています。

 しかし、実際に起こっていることは、「肉芽が収縮している」ことです。

 「表皮が伸びている」というのは考えていることです。

 実際には「肉芽が縮んでいる」のです(一般意味論の「内側の世界」と「外側の世界」を参照)。

 「深い傷」の治癒に大切なことは、肉芽をいじめず、良い環境に置いてあげることです。

 それだけで「深い傷」は治ります。

 成長ホルモン入り軟膏?そんなものはいりません。

 肉芽を乾かさなければよいだけです。

 何が起こっているかを理解すれば、白色ワセリンだけでも良いかもしれません。
 

 理論は「今、ここで」起こっていることを理解しやすくするためのツールです。

 木ねじを回したいときにドライバーを使わずに、金槌を使ってもうまく仕事できません。

 そのときは、金槌が悪いのではなく、金槌を選んだ人が間違えているのです。

 もし、実際の世界を分析したときに、現実をうまく説明できなければ、ツールの選び方を間違えています。

 「深い傷」の治り方を、サイバネティクスの考え方で見てみましょう。

 それはすでに「サイバネティクス」のところの、「ポジティブ・フィードバックとネガティブ・フィードバック」で解説しました。

 ちょっと、復習してみましょう。
未完