コミュニケーションの計量


 「人間のコミュニケーションの80%以上が非言語的コミュニケーションである」と言う人がいます。

 嘘です。

 私は、「非言語的コミュニケーションが80%以下だ」と言うのではありません。

 
言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションは、量的比較が不可能だと言いたいのです。

 非言語的なコミュニケーションについて、「計測」したのは、アルバート・メラビアン(Albert Mehrabian)が最初だろうと思います。

 メラビアンは1981年に"Silent Message"という本を書きました。

 その中に、非言語的なコミュニケーションについて計測した結果が書かれています。

 

 話し手の話していることの内容よりも、表情、態度、声の調子が聞き手に、好き嫌いの感情を誘発することが多い。

 計測の結果、以下の等式が成り立った。

 話し手の好感度=言葉の内容の好感度 7% + 声の好感度 38% + 顔の表情の好感度 55%

 

 メラビアン自身が、注意事項を書いています。

 「この等式は、実験の結果を示したものである。

 いつでも誰にでもこの等式が当てはまるというものではない。

 また、これは好感度について、述べたものである(コミュニケーションの内容ではない)。」

 メラビアン自身のホームページを読むとわかります。


 言語化するということは、記号化することです。

 記号の量で情報量をはかれるかもしれません。

 しかし、言語にできない「非言語的コミュニケーション」は情報量を計量できません。

 ですから、非言語的コミュニケーションは、言語的コミュニケーションと同じ天秤に乗せられません。

 また、「言語化できない」ということは、「内言にできない」ということです。

 「内言」にできなければ、「抽象的思考」の対象に上ってきません。

 「比較」という抽象的思考の対象にならないのです。