アリストテレス


 アリストテレスはすべてのものには、4つの因子があるとしました。

 1.本来の性質、2.原材料、3変化のもと、4.目的の4つです。

  哲学の本ではそれぞ れ形相因、質料因、始動因、目的因と翻訳されます。

 でも、難解な言葉ですから、わかりやすくします。

 この1番目を
エイドスと呼びました。

 この語源はギリシア語のidein、イデアと同じで す。

 実はプラトンもエイドスという言葉をイデアと同義語として使っています。

 しかし、アリストテレスは違う意味を当てています。

 こんなことがあるので、哲 学の本は大変読みづらいです。

 時には、翻訳もひどくて日本語になっていないものがあります。

 特にギリシア哲学の本で、ギリシア語を読んだ著者が英語で書い た解説書を日本語に翻訳してあるものは悲惨なものがあります。

 プラトンはイデアは普遍的に存在すると言いましたが、
「本来の性質(エイドス)」は個別性があります。

 たとえば、鉄のナイ フのエイドスは「鋭く硬いこと」です。

 これは材料が「鉄」だから持っている性質です。

 鉄という材料と切り離して考えることはできません。

 鉄鉱石からナイフ へ変化した因子は「加工」です。

 ナイフの目的は「切ること」です。

 この4つがナイフの4つの因子です。

 鉄鉱石がナイフになるための加工を受ける前は、いろいろなものに加工できる可能性があります。

 つまり、鉄鉱石は潜在能力(potentiality)を 持っています。

 このようないろいろなものになることが可能な状態を
デュミナス(可能態)と呼びま した。

 そして、可能性を減らし現実にあわせたナイフのような状態を
エネルゲイア(現実態)と呼びま した。

 鉄は鉄鉱石というデュミナスから、ナイフというエネルゲイアへ変化するのです。

 この変化はギリシア語で、kine(キネ)です。

 キネステティクのキ ネはギリシア語のkinesisからきています。

 そのkinesisはもともと変化という言葉からきています。

 
「動 き」は「変化」です。

 話を戻します。

 アリストテレスはプラトンのイデアを否定し、エイドスが個別に存在するとしました。

 アリストテレスによれば、「美しいもの」は材料ととも に存在する「性質」を持っているが、その性質が見たものの中に移動するわけではありません(ここも理解する必要ありません。あとで否定されます)。

 エイドスのラテン語はscientia(スキエンティア)です。

 もちろん、これは英語のscience(科学)の語源です。

 アリストテレスにとって、
科学とは、ものの材料の持つ本来の性質を求めることでした。