キネステティク実践の科学
 さて、今まで書いてきたことは妥当なことなのでしょうか?私一人がそう考えているのでしょうか?

 実は、私は今まで書いてきた考え方にたどりついたときに、はっと気がついたことがあります。

 長年、気にかかっていたのですが、解決できなかったものが解決できました。


 キネステティクの参考書として紹介している本に、ハイジ・B・ミスバッハの書いた「ICUのキネステティク」があります。

 この本の前書きをウルム大学の看護部長、アンナ・アイゼンシンクが書いています。その一部です。

 キネステティクは日常の看護に専門性を与える学問です。

 理論と知識を実践に移し、また、その反対を行なうことで、学習能力、学習意欲を強化し、仕事をしながら考えられるようになります。


 この文章を最初に読んだときには、意味がつかめませんでした。

 具体的なイメージがわかなかったのです。今は意味が分かります。実践の中で問題点を見つけたら、キネステティクの概念に照らして仮説を立てられます。

 それを実践の中で自ら検証することで、仮説の妥当性をチェックできます。

 そして、仮説を修正して、再び実践に持って行くと、「科学的な介助」をすることができ、専門性が高まるというのです。

 逆に言うと、医学、看護、キネステティクすべてについて、科学的教育で教えるべきものは、ハウツーではなく、このような「態度=考え方」なのです。

 この態度=考え方がなければ、どんなに高度なハウツーも知識も、すぐに陳腐なものになります。

 この「態度」を身につければ、いつでも科学的アプローチができます。

 先ほどのアイゼンシンクは同じく前書きに、つぎのように書いています。


 教育を受けると、ナースは患者が必要とするものについて、より早く気づくようになります。

 さらに知識と経験をつめば、ナースは安全に、かつすばやくその場の状況に合わせて動くことができるようになります。

 思うとおりに動けて、うまく介助でき、自分自身が気持ちよいという、はっきりした結果が出ると、ナースに安心と自信がわいてきます。

 
能力が高まると、それまで経験したことのないことでも一人で対処できるようになります。

 
病院経営者はそんなナースを求めています。


 ここも最初は意味不明のところでした。

 でも、今は理解できます。科学的態度は良い意味での試行錯誤と発見から得られるのです。

 体験したことのない状況ではハウツーは役に立ちません。

 自分の創造性が問われます。

 実践から気づき、検証する人が対処できるのです。

科学とは何か 終了