第1種の過誤と第2種の過誤


 科学的な仮説を立てて検証するときに、出会う誤り(過誤)には2種類あります。


 第1種の過誤
は、仮説(理論)自体の誤りです。

 たとえば、プトレマイオスの天動説は太陽が地球の周りを回るという仮説のもとに、月、火星、金星も木星などの天体の動きを説明します。

 この仮説の建て方が間違い=過誤です。これが第1種の過誤です。

 詳しく現実と照らし合わせて見ていくとだんだんあわないところが出てきます。

 そこで、「あー、これは間違えたな。考え直そう」とすると良いのです。

 しかし、、自分の誤りを認めたくないときがあります。

 そして、「きっと、これは実験や観察がまずいのだ」と考えて実験や観察の方法を変えてみることがあります

 第2種の過誤は「仮説(理論)の誤りを認めず、証明方法の誤りと考える」ことです。

 ほとんどの研究者は第2種の過誤を犯します。

 天動説では、「その場しのぎ(ad hoc アドホック)の仮説」をどんどん足していくことになりました。

 しかし、現実とは違う仮説であれば、いつかはどうにもならないことになります。

 この時初めて仮説を捨てます。

 このようにして、科学的検証には2つの過誤があり、そのどちらかは新しいパラダイムがでるまで、わかりません。

 石にしがみつくように実験を繰り返して、最後に証明されることもあります。

 文字通り「死ぬまで」第1種の誤りに気づかず実験を続ける人もいます。

 人間を対象にした薬の臨床実験の多くが第2種の過誤を犯しているように見えます。

 実験や観察をしているときには、これは判定できません。

 科学的検証とはこのような限界を持つものです。