クライエントが分析医を信頼する転移は好ましいことのように見えます。
しかし、そこで治療が終わるのではありません。
治療が続くと、クライエントの固着したところがはっきりしてきます。
問題点をはっきりさせて、「はい、おめでとう」となれば良いのですが、そうはいきません。
なぜなら、クライエントにとって、その問題点は「隠しておきたい」ところなのです。
リビドーを固着させたエピソードは記憶の中に隠れています。
それが、前意識から意識に、ちょっと顔を出しては引っ込めます。
それを明らかにすれば、楽になるでしょう。
しかし、明らかにしたくないから神経症というトラブルの陰にかくして置いたのです。
クライエントは、「・・・で困っている」とは言いますが、その「困っている」という状態にあることで、明らかにされたらもっと困ることを隠しているのです。
もちろん、クライエント自身も自分が隠そうとしていることを知りません。
無意識、または前意識の防御行動なのです。
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