抵抗

 弱いために、神経症という隠れ蓑にくるまっていた「無意識・前意識の心」に分析医は近づこうとします。

 しかし、クライエントはそこに触れられたくはないのです。

 分析医がクライエントの連想や夢から、なにかを詳しく知りたいと思うときには質問をします。

 そして、クライエントから、「あっ、たいしたことではないのです」と言われ、答えの得られないことがあります。

 フロイトは、そんなときこそ、深くつっこむときだと言います。

 クライエントが、さりげなく拒否するときこそ、一番触れられたくないところに近づいたときなのです。

 そして、一番触れられたくないところに、分析医が近づいてくると、クライエントは抵抗します。

 話をそらす、分析の予約時間に遅れてくる、「治った」と嘘をつく。

 さまざまな行動で抵抗します。

 ときには、クライエントが怒りを爆発させることもあります。

 しかし、そのような抵抗を超えていくことが、精神分析には必要だと言います。

 かくして、分析医はせっかく得られた信頼感を失い、非難されながら、クライエントの固着した部分に到達します。

 そうして、それをクライエントに気づかせることで、治療が完成すると言います。



 ふう、書いていても息が詰まるような仕事です。

 このように、分析医ははじめ好意的に受け入れられ、そのあとで抵抗を受け、いやがられながらも、治療が完成したときには、クライエントの親の座から引き下ろされます。

 普通の神経ではできない仕事です。

 
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