Valid HTML 4.01!
 グルジェフは、3つのシリーズとして本を書きました。

 第1シリーズは「人間の生に対する客観的かつ公平無私なる批判」(別名 「ベルゼバブの孫への話」)

 第2シリーズは、「注目すべき人々との出会い」

 第3シリーズは、「生は<私が存在し>て初めて真実になる」です。

 どのシリーズも読みにくいです。英語でも、日本語でも読みづらい。

 一つの文章がとても長く、論理の流れが時間的に前後します。

 グルジェフの言いたいことを理解している人だけが、その文章を理解できます。

 グルジェフの言いたいことを理解していないで、書かれている言葉を、従来から自分が持っている「言葉の意味」で理解しようとすると、迷宮にはまりこみます。

 つまり、中途半端な理解でグルジェフの書いたものを読むと、その内容は神秘的になります。

book Life Is Real Only Then, When "I Am" 生は<私が存在し>て初めて真実となる」は、グルジェフの3シリーズの最後の書です。

 ふふふ、神秘的な題名でしょ?

 題名の「言葉」を、普通の人の使う「意味」でとらえると、何を言っているのかがわかりません。

 でも、このサイトを読んできた人なら、普通の「意味」と違う意味で考えることができるかもしれません。

 一般意味論で、言葉は記号でしかないことが説かれていました。

 言葉はそれ自体に意味があるのではなく、その「言葉」が使われたコンテクストで意味ができます。

 ゲシュタルト療法では、意味は「図」ではなく、境界で決まります。

 一般意味論にせよ、ゲシュタルト療法にせよ、言葉自体に意味はなく、その言葉の周囲にあるもの、コンテクストや「地」によって意味が変わるということを示しています。

 ですから、この題名を「言葉通りに」理解しようとすることが、自らを神秘に突き落としてしまいます。


 この題名のキーワードは、I、「私」です

 ”I Am”が大切なのです。

 この”I Am”は「私が存在する」というだけではありません。

 ”I”がキーですから、「私がどのように存在してかということを、私が知っている」ことが大切だというのです。

 すべてのものに、”I”、「私」がかかわるのです。

 Life、「生」はもちろん、「私が生きていること」です。

 この言葉にも「私」が影響して意味が生じます。

 ”Real”という言葉は、「私」から離れます。

 この言葉はPerception「認識」と対になる言葉だからです。

 Realは「外側の世界から来る刺激を、そのままで受けとること」ですし、認識は「外側の世界から受けた刺激を、解釈して内側の世界を作ること」です。

 つまり、Life Is Real Only Then, When "I Am" は、「私がどのように存在してるかを、私が知っているときだけ、私がここで生きていることが、外側の世界との関係において、はっきりする」ことです。

 何かに似ているでしょう?

 そう、Awareness、「気づき」「悟り」「自己実現」なのです。


 グルジェフは「自己想起」という言葉を使いました。

 self−rememberingです。

 「自分を思い出すこと」ではなく、「自分を覚えていること」です。

 ここに、この本の中から、グルジェフが神の存在を認めたときの一節を載せます。

 一面からいえば、日常生活のプロセスの中でも〈自己想起〉が必要であり、また別の面からいえば、ある種の注意深さ、つまり他人と接触する時には、彼らと打ち解けた関係がもてるような注意深さも必要であった。

 私はこれまであらゆることをやってみた。

 自己想起や注意を促すためにありとあらゆるものを身につけてもみた。

 しかし何一つとして助けにはならなかった。

 いや、身につけた初めのうちは少しは助けになった。

 しかしひとたびそれを身につけるのをやめるか、あるいはそれに慣れてしまうと、すべては元のもくあみになってしまうのだった。

 解決法は何一つなかった。

 いや、実は一つだけあった。私の外部に、いわば〈決して眠ることのない監視人〉をおくことである。

 つまり、私がどんな状態にあろうと常に〈自己想起〉を促す監視人である。しかしいったいそんなことが可能だろうか?

 これはまったく新しい考えだった。

 どうしてこれまで、こんな簡単なことを思いつかなかったのだろう?

 たったこれだけのことを思いつくために、あれだげの苦しみと幻滅をなめてきたのだろう・・・

 いや、こんな時こそ〈普遍的なアナロジー〉に目を向けるべきではあるまいか?

 するとそこには、またしても神がおられるのだ!!! またしても!……

 彼のみが遍(あまね)く存在し、彼こそがありとあらゆるものを結びつけておられるのだ。

 これを言葉だけ読むと、なにやら、わからないことになります。

 でも、これがAwarenessについて書いていると理解していると、大変わかりやすくなります。

back next