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1951年、銀座にできた「銀巴里」は日本のシャンソンの中心でした。
1967年、銀座の銀巴里で働いていた浅川浩二さんが 札幌に「銀巴里」を出しました。
銀座の「銀巴里」は1990年にお店を閉じましたが、札幌にその灯は受け継がれています。
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「違いの分かる違いが情報になる」とベイトソンが認識論で言っています。
ということは、ジャズを演奏するのに、ほかの音楽も聞いておいたほうが良いということです。
ある日、それまでまったく興味のなかったシャンソンを聞いてみようと、「銀巴里」に入ってみました。
やはり、なにごとも体験が大切です。
専属歌手の熊五郎さんは、マイクなしでもビル中に響き渡るほどの声量があります。
大きな胸郭のなかにアンプを内蔵しているようです。
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後列右から、マスター、甲斐熊五郎さん
前列右から、「赤本」の共著者の戸田久美子さん、歌手の伏見淑子さん、ピアニストの渡辺真美さん、さあさん。
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マスターは銀座の「銀巴里」でアルバイトとして働いていたころから、ずーっとシャンソン大好き人間でした。
お話すると「本当にシャンソンが好きなんだなぁ」と感じます。
ピアニストの真美さんは、ソロでも上手なのですが、伴奏のときには歌手の歌を邪魔することなく聞かせます。
伏見淑子さんは、専属ではなく日本中で歌っています。
「詩は歌え、歌は語れ」と言われます。
はじめて伏見さんの歌を聴いたときに、この言葉の意味を体験で理解しました。
本当に語っているのです。
もちろん、歌なのですが、感じるものは「語り」なのです。
ステージが終わった後、お話させていただきました。
すっかり、ファンになりました。
戸田さんもファンなのです。
それ以来、札幌に来る前に案内をくださいます。
先日、伏見さんが札幌の「銀巴里」に公演にいらしたので、聴きに行きました。
そこで戸田さんが「歌い方を変えたんですか?声が重く厚くなったように感じます」と聞きました。
伏見さんが答えました。
わたしね、歌を歌うのではなくて、自分の今、そのときの気持ちを語るようにしたの。
だから、ピアノの人は大変なの。
1小節で収まるはずのところが次の小節に入ったりするから。
でもね、ただ、きちっと歌うのは、おもしろくないのよ。
そんなことにとらわれずに、自分の中にあるものをそのまま出せたときに、最高だと感じるのよ。
伏見さんは、一般意味論も、マズローの「自己実現」も人間性心理学が「今、ここで」を強調することも知りません。
そんなものはシャンソンでは教わりません。
しかし、シャンソンを歌う人生を続けるうちに、体験として学び、「自分のやりたいことが、今ここでできる」人になりました。
本を読むだけの学習では本当の学習はできません。
「自分のやりたいことをやっている人」の存在を感じられれば、自分が自分を抑制していることに気づくチャンスを得られます。
私にとって、伏見さんのシャンソンを聞くことは、そういう人の存在を感じることを通して、自分という存在を再認識するチャンスなのです。
もし、賢ければ、そういう人とともにした記憶を思い出すだけで、同じ刺激を得られるはずなのですが、そこまで記憶力がよくない私はときどき、覚醒刺激を受けに行くのです。
札幌に来たら、「銀巴里」を訪ねてください。
そして、シャンソンを歌っている人の「あるがままの存在」を感じられたら、あなたも「あるがままの自分」を感じられるかもしれません。
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「銀巴里」 札幌市中央区区南五条西三丁目 五条ビルB1(011-511-8061)

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