救助と介助はとても違うもののように感じます。 片方は命に直結するけれど、片方はもっとゆっくりしたものに感じます。 「川遊び」をしたことがあるでしょうか? よく知られているのはカヌーです。
まったりと湖沼を漂うように進んでいくのがテレビで紹介されたりしています。 |
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カヌーより攻撃的なのはカヤック。 カヤックはウエストの周りと艇の隙間をスカートのようなゴムシートで覆ってしまいます。 ひっくり返っても艇の中に水かはいらないので、上手にすると自分で元に戻ることができます。 エスキモーロールといいます。 ただし、戻れないとゴムのスカートをはずして脱出しなければなりません。 わたしはエスキモーロールをやりたくて、何度かチャレンジしましたが、そのたびに本当に「死ぬ!」と思いました。 病院に勤める人は、カヤックを体験することをお勧めします。 「人間は簡単に死ねる」と実感します。 死は他人事ではないのです。 |
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かっこよいでしょ。 でも、実は右のパドルを波に食われてあがいているだけです。すぐにひっくり返りました。 |
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ラフトと呼ばれる大きなゴムボートに数人で乗って下るのをラフティングといいます。 2人乗りのゴムボートはダッキーです。 オーストラリアやニュージーランドでは死にそうな流れの中をラフトやダッキーで下ります。 そして、本当に、水死する事故が起きています。 川遊びに行くと、必ず最初に「救助されること」を教えられます。 ですから、川遊びには良いインストラクターが必要です。 良いインストラクターは、こちらのやりたいことと能力を勘案して、できることをやらせてくれます。 できそうもないことは、「それはできない」と言います。 クライエントが川に落ちたら、どのようにして救助できるかを考えて、川を下っていきます。 危ないインストラクターは、かっこうよくなんでもできるようなことを言いますが、クライエントを驚かせて喜ばせるためにわざと川に落としたりします。 川は危険なのです。
カヤックで死にそうになり、ダッキーで凍えながら、救助されるときに考えました。 「いつも救助されているのも芸がない。水難救助法を習ってみよう。」 アメリカでは水の事故でなくなる人が多いので、水難救助法を教える民間教育団体があります。 最初、3人の人が始めたので、レスキュー・スリーと名前が付いています。 アメリカでは水難救助にあたるには、この講習を受けていないと、たとえ消防隊員でも川に近づいてはならないと決められているそうです。 一番最初のレベルであるスイフトウォーター・ファーストレスポンダー(SFR)を受けました。 1日がかりで、講義と実習です。 実習では、救助ロープの投げ方、ラフトを使った救助訓練や流れの中を歩くこと、泳いで川を渡ることを教えられます。 両足がこむら返りをおこしました。浅い川でも危険なことがよくわかりました。 講義で最初に教わることは、「まず誰を救うか」です。誰だと思いますか? 「まず、自分を救え」と教えられます。 自分が助からなければ、相手を救えないのです。 そのためには、自分を危険な目に遭わせて救助する人は失格です。 映画や漫画のようにはいきません。 では、要救助者が次なのかというと、そうではないのです。 「チーム」なのです。自分を含めたチームの安全確保が2番目です。 3番目に要救助者が来ます。 介助にも同じことが言えます。 介助者が自分の体をこわすような介助は危険です。 被介助者が立つときに手伝っている人が腰を痛めた瞬間、被介助者は支援を失います。 この瞬間は、介助者も被介助者も危険な状態です。 介助者が常に安全で安定しているならば、被介助者がバランスを崩したときに、すぐに二人の動きを止めてバランスを修正できます。 被介助者が暴れて、介助者の能力を超えて転んだとしたら、それは誰も予防できなかったことです。 しかし、介助者が自分の安全を確保しないままに介助して転んでしまえば、被介助者は人為的な事故により、ケガをします。 介助にとって、一番大切なのは介助者の安全なのです。 また、2人で介助するときにも同じことになります。 チームの安全を確保しないと、被介助者の安全は確保できません。 介助をシステムとして眺めると、「まず誰を救うか」という問いの意味がわかります。 被介助者と介助者がシステムを組んで動くときには、両者はシステムの構成要素です。 構成要素の一つである被介助者の足りない能力を補うために、もう一つの要素である介助者がいます。 もし、介助者が安定して機能しなければ二人で作るシステムが機能を果たすことはできません。 介助者という構成要素が完全に機能して、初めて二人で作るシステムが機能して、被介助者という構成要素の修復に役立つかもしれないのです。 こむら返りの痛みを感じながら、「介助も救助も同じことだ」と気づいたのでした。 介助を教える人には、レスキュー・スリーで「救助」を教わることをお勧めします。 原点を感じることができます。 |
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2005/04/23
はりきって出かけた川は、まだ冬でした。 |
一緒に行った大阪人2人は日ごろのストレスのために川に身を投げましたが、救助されました。 |