今、病院で

 現在、褥瘡予防としてポジショニングを教育する人々がいます。

 ベッドや椅子に座るときに、ずれないように「座った形」を決めようというのです。

 また、「安楽な姿勢」を決めようという人もいます。

 「良肢位」という言葉があるので、固定してよい体位があると思い込んでいる人がいます。

 今までのページを読んで実験してきたあなたなら理解していただけるでしょう。

 体を固めてはいけません。

 
誰もやらないだろう実験

 椅子に20分間同じ姿勢で座っていてください。


 あなたは上に書いた実験をしないでしょう。

 私もしません。しなくたって結果はわかるのです。

 とても耐えられない!

 同じ姿勢で固められるのは、想像しただけで苦しい。

 長時間、立っていることはできます。

 長時間、座っていることもできます。

 でも、同じ姿勢でいることは、短い時間でもいやです。

 動けないのはいやです。

 小さく動きたくなるのです。

 体の中の小さな動きを許すような、「外側の空間が必要」なのです。

 「良い体位」は「楽に小さく動ける体位」です。

 「良肢位」は整形外科医が、関節固定術を行うときに、「関節を固定しても、そこそこの機能が残る肢位」のことです。

 けっして、「その肢位にしておけば良い」という体位ではありません。

 あなたが介助しようとしている人は、「弱っていて助けを必要としている」人なのです

 そんな人の呼吸を邪魔してはいけません。

 大切なのは、「ずれないように」することではなく、「楽に呼吸できるように」することです。

 もちろん、呼吸を楽にできるということは、骨盤から脊柱が楽に小さく動くことです。

 そのために、時間がたてば体位が崩れるかもしれません。

 しかし、「時間がたてば体位が崩れる」ことは当然なのです。