臥位から座位になるということは、股関節が曲がることです。

 座位の特徴は、「股関節の屈曲」にあります。

 「膝が曲がる」、「背中が頭側に伸びる」というのは、「股関節が曲がる」ことに、「
従って起きてくること」です。

 「従って起きてくる」ということは、先に起こるのでもなく、同時に起こるのでもありません。

 股関節の曲がりに合わせて、ハムストリングが引っ張られて、緊張が高まります。

 ハムストリングの緊張をゆるめるために、膝関節が曲がります。

 膝関節が曲がるから、股関節が曲がるのではありません。


 「股関節の屈曲の程度に合わせて膝が曲がる」という動きは時間の流れとともに変化します。

 もし、あらかじめ膝を曲げておくと、ハムストリングはいったん縮みます。

 縮んだところで、ハムストリングはその長さにあった緊張(筋トーヌス)になります。

 それから、股関節を曲げると、ハムストリングは再び伸ばされます。

 また、筋トーヌスが変わるのです。

 このように動くと、体のあちこちの筋肉が一個づつ別々にトーヌスを大きく調節しなければなりません。

 しかし、なめらかに動くと、股関節の屈曲の程度に合わせて、ハムストリングの筋トーヌスが最小の変化ですむように、膝を曲げて調節できます。

 ハムストリングに、弛緩や緊張を味合わせることなしに座るかもしれません。


 ベッドで寝ている人の動きや感覚を楽にするためという目的に気づかずに、褥瘡予防のために、力学だけを使い、形を追いかけるのはおろかなことかもしれません。