大腰筋と腸骨筋

 前のページの実験で、大腰筋と腸骨筋が大腿骨についているところの緊張を感じられたでしょうか?


 Grayの解剖学から、大腰筋と腸骨筋の働きの解説を拾ってみます。



 腸骨筋と協力して、大腰筋が上の方から収縮すると、大腿骨を骨盤の方に屈曲させます。

 片方の大腰筋が下の方から収縮し始めると、まず腰椎を前方、収縮した大腰筋の側に引っ張り、腰椎を屈曲させます。

 ついで腸骨筋と協力して骨盤を前傾させます。

 両方の大腰筋が一緒に下方から収縮し始めると、骨盤と腰椎を支えて大腿骨の上に骨盤が直立位を保つように働きます。

 さらに収縮すると、体幹と骨盤を前に傾けます。

 寝たままで上体を起こすような動きです。


 わかりずらいので、左にアニメーションで示しました。

 大腰筋は第12胸椎から第5腰椎の側面についています。

 アニメーションには第1腰椎と第5腰椎についている右側の大腰筋のみを線で示しました。

 青いのは弛緩している筋肉、赤いのが収縮している筋肉です。

 赤みが強くなるに従い、収縮の強いことを示しています。

 大腰筋が下の方から収縮すると、まず第5腰椎を骨盤の上で前に引きます。

 その結果、第5腰椎がしっかりと骨盤の上に乗ります。

 その後に、大腰筋の上の方が収縮すると、腰椎全体が骨盤の上に乗ります。

 このとき、腰椎は前方に動いていますから、解剖学的には屈曲なのですが、体は「腰が伸びた!」と感じます。

 これが「背中が伸びる」感覚のもとです。

 さらに大腰筋が収縮すると、腰椎全体が前方に傾きます。

 座っていれば、上体が前に傾きますから、「腰を屈めた」と感じます。

 同じ筋肉の収縮が「腰が伸びた」と「腰を屈めた」の両方の感覚に寄与しています。

 おもしろいでしょ!?

 大腰筋のおもしろい動きをイメージしながら、骨盤を前後にゆらゆらさせてください。

 この筋肉は体の中心で骨盤とその上に乗っている脊柱の関係を司っている体のコアになる筋肉です。



 前のページの実験では、両方の大腰筋で骨盤を動かすようにしてみました。


 大腰筋は腰椎の側面についていますから、片方だけが収縮すると、脊柱を斜め前に曲げます。

 両方一緒に働くと、腰椎を前に曲げることができます。

 大腰筋は股関節や腰椎と仙骨の関節をまたいでいます。

 二つ以上の関節をまたいでいますから、その働きは複雑です。

 しかし、腸骨筋は股関節をまたぐだけですから、単純に股関節を屈曲させます。

 ですから、腸骨筋がいっしょに収縮することで、初めて股関節を屈曲させることができます。