20年前、クレジットカードを作ったときは、就職したばかりだった。
わたしは、先輩にどうすればカードを作れるのかと聞いた。
すると、先輩は親切にも、申込書を取り寄せてくれて書き方まで教えてくれた。
「就職したばかりで信用がないから、ボクの名前を紹介者の欄に書いておきなさい」と先輩が言ってくれた。
良い先輩だった。
わたしが社会から信用されていないことを教えてくれた。
わたしは希望したカードを手に入れた。
それが年会費有料のカードだった。
先輩は紹介者としてカード会社からワイン半ダースをもらったと後から知った。
良い先輩だった。
わたしにとってではなく、カード会社にとってである。
事象は視点が変わると評価も変わる。
もちろん、わたしは悪人なので、良い先輩とその後、お会いしていない。
風の噂では、某病院の院長になったという。
きっと、すばらしく良い病院だろう。
生まれながらの善人が集まった病院だと思う。
誰でも院長ができるほどなのだろう。
カードはそのまま使っている。
高潔なわたしは自分の都合で断ることができないのである。
ほかのカード会社に信用がないからではない。
わたしは多くの金融機関から絶対的な信用を受けていることに自信がある。
「あいつに貸したら絶対焦げ付く」と信用されていると思う。
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