ストーマケアと心理その後

 この講義の受講者からのアンケートの集計が出ました。

 満足度や理解度は、わたしの関心あるところではありません。

 それらは主催者の関心あるところです。

 わたしは自由記述のところに興味ありました。

 受講者の声は以下の通り。


 ・講義の資料がほしいと思った

 よく言われることです。

 でも、わたしは最近、資料を配付しないことにしています。

 講義の内容は受講者の反応で時々刻々変化します。

 だから、あらかじめ資料を用意して、それを消化するという講義はおもしろくないのです。

 いつでもライブのような講義がしたい。

 そのほうが自分が楽しいから。

 というわけで、この要望はかなわないでしょう。


 ・とても参考になった

 講義をしたかいがありました。


・ストーマ以外の患者にも使えると思った

 もちろんです。

 ストーマを持っている人も、持っていない人も、人間ですから、心理学は同じように有効に使えるはずです。


・患者の心理面や今までの自分の関わりについてよく振り返る機会になり、とてもおもしろかった(2)

 そうです。

 「自分の関わり」、これに気づくことが大切です。

 いつでも、「自分」がいて、状況が作られていることに気づくと、楽になります。


・とても重要な内容だと思うので事例など聞きたい

 事例はあなたの周りにごろごろあります。

 自分が周りの人間の行動に気づきさえすれば、どんどん見えてくるのです。

 逆に、わたしが事例を挙げて解説したとたんに、現実に起こっていることに目を向けず、わたしの解説を理解しようとするかもしれません。

 それが目を曇らせるかもしれません。

 そんなに難しいことはしゃべっていないのですよ。


・とても興味深く聞いた。自分のことを見つめ新しい気持ちで職場に戻りたいと思う

 興味を持つことが、人間関係や学問の基礎です。

 それを持って、職場に帰るとよりよい仕事ができるかもしれません。

 そうすると、楽に生きられます。


・オストメイトの具体的な心理描写をもっと加えてほしい

 これは無理。

 わたしは、有名な占い師や、詐欺師とは違います。

 他人の心など読めません。

 自分の心理描写ならできるかもしれません。

 でも、そんなことは恥ずかしくてできません。

・大変おもしろかった(5名)

 「おもしろい」というのは、大切なことです。

 「おもしろくないこと」を講義しなければならないときは、やめた方がよいときです。


・もっと長く講義を受けたかった。(2)

 ははは、欲張りです。

 ストーマケアの講習で、こんな心理学の入門講義が行なわれるのは、北海道だけです。

 他のところでは、未だにフィンク様々なのです。

 わたしだって、心理学の講義は初めてでしたから、うまくできたことがラッキーなのです。

 北海道のストーマリハビリテーション講習会実行委員会の寛容さに感謝してください。

 「今、ここ」で受講できたラッキーなことを忘れて、「もっと」と言うのが不幸への片道切符です。

 それを講義で話したのです。

・澤ロ先生に他分野の講義もしてほしい

 それは無理です。

 わたしは自分の興味のないことは、やりません。

 ストーマケアについては、10年前に外科医をやめたから、手を出していません。

 自分のやらないことを話すことは、危険行為です。

 医療の中の患者と医療者の心理については、まだ現職ですから話せます。

 ストーマケアの他分野は、手を離したので話さないのです(ここは声に出して読むこと。駄ジャレになっているから)。


・心理学は苦手だったがもう一度勉強したくなった

 これが最高のフィードバックです。

 講義した内容ではなく、講義した目的が伝わっています。

 わたしがしめしたことは、「他人の心を知ることはできない。でも、知ることができたと思うときは楽しい」ということです。

 その刺激が、受講者の中で、「自分も同じことを学習できるかもしれない」という気持ちを生み、心理学を学習しなおそうという動機になったのです。

 話したことだけに留まらず、その先に進む動機になったのです。

 これが、最高のフィードバックです。