こんなこともあります

 これは、某看護師から「暇つぶしに読んでください」と送られてきたメールです。

 個人が特定できないように、一部、隠しました。

 事実はそのまま。


 TO さあさん

 昨日、皮膚科の在宅の患者さんで褥瘡予防のお話をした人がいます。

 年齢80歳 女性 脳梗塞後で左半身麻痺、認知症あり、昨年左下腿骨折をした時にキプスまいて踵に褥瘡ができたようです。

 治癒までに半年を要し私にふられたわけです。

 この方、言葉のコミュニケーションは成り立たず、、触ると大声で「いたーい」と叫びます。

 一方向性、調歩式のインタラクションはあきらめ、同時性のインタラクションを心掛け、ベッドから車椅子に移動させたら、そこから表情が変わりました。

 使える右足に重さを移しただけなのですが、その時の表情の変化がとても面白かったです。

 それからは車椅子の後方への移動もスムースにできました。

 時間がなくて、娘さんには移動は教えられなかったんですが、方法はいろいろある事だけは伝えることができました。

 小さな体位変換とか、固定して動けない体位を取るくらいなら崩れても動ける体位の方が残存機能が活かせるとか、声をかけて動きを誘導する事も徐圧減圧につながるとか・・・

 話し出したらきりがなくて・・・

 「こういう介護を教えてくれるところがなくてヘルパーさんの見よう見まねなんです・・」とその方の娘さんもおっしゃっていました、、、、

 在宅在宅と叫ばれている割には、、地域で介護教室が開かれていない現実を知ってしまいました・・・

 また、、仕事が増えそうです(苦笑)

 今日はベランダの鉢植えの植え替えをするので、もう帰ります・・・

 では、、お邪魔しました・・・
 
 by ○○○

 上の青文字で示したところは、キネステティクスやフェルデンクライス・メソッドという共通のツールがあるから理解できるところです。

 ここにキネステティクスの科学性があります。

 共通の体験から、ある言葉に共通の意味を与えているのです。

 上の青文字の言葉を、通常の日常生活の言葉で理解すると、理解不能です。

 ですから、今、これを読んでいるあなたが理解できなくてもおかしくありません。

 でも、キネステティクスのセミナーを受けていると、理解できるのです。

 このように、キネステティクは、共通の辞書を持つためのツールです。

 このツールを持った人が、動きについて情報を交換できます。

 記録を残せます。

 ですから、ドイツでは看護診断の記載に役立つだろうからと、普及されているのです。

 言語化のツールです。


 しかし、このメールの送り主は、言語化のツールとしてのキネステティクを広めたいと思っていません。

 このメールで自慢したかったことは、「その時の表情の変化がとても面白かった」です。

 キネステティクの実践を続ける理由はここにあります。

 「おもしろい」のです。

 介助される人が、変化することがおもしろいのです。

 このメールのようにすぐ変化することもありますし、時間をかけてゆっくり変化することもあります。

 いずれにせよ、変化を作れることがおもしろいのです。

 そして、変化は情報ですし、自らの行動に対するフィードバックでもありますから、生きている実感を与えてくれるのなのです。

 だから、このメールが送られてきたのでしょう。

 「暇なときに読んでください」と書いてきたのは、「時間をかけて、ゆっくり読めよ。忙しいときに、読み飛ばすな」というメッセージなのでした。


 赤文字で示したところは、現在の医療・看護の問題点です。

 褥瘡対策にもっとも必要なことは、「動きの支援」、「動きの教育」なのですが、それを提供できる医師や看護師がとても少ないのです。

 褥瘡の発生予想のスケールを作っても、その後の対処方法が貧弱では効果が上がりません。

 また、対処方法が進歩すれば、スケールは変ります。

 現在、看護学で薦められる褥瘡予防のスケールの「動きの評価」が貧弱なことは、介助という手段についての教育、支援の能力が貧弱なことを物語っています。

 このメールを送ってくれた看護師に期待しましょう。