これから来るもの

 統計学と疫学は違います。疫学では、疾患の発生とその原因の関係を探ります。

 このときに大切なのは、研究のデザインです。

 統計学は分析の手法です。調査の手法は別です。

 調査の手法は以下のようなものがあります。


1. 時間断面調査(横断調査)

  2004年の褥瘡の施設別発生率を調べて、病院と老健での発生率の差から、要因を推定するようなもの。

  患者さんのそれまでの経過がわからないのが欠点。


2. 症例対照研究

  褥瘡のできている人と、できていない人を比べて、その人に何をしたから褥瘡ができたかを推定するようなもの。

  褥瘡ができている人は、できていない人とは違う種類の人かもしれないという誤差を含むので、正確ではない。


3. コホート研究

  ある集団(たとえば、日本人全員)丸ごとのデータをとって、疾患にかかった人とかからなかった人のデータの違いから、要因を推定する。

  かなり、正確だが、手間と時間がかかる。


4. 介入研究

 
 褥瘡のある患者さんを、ある薬剤を投与した群としない群に分けて、その効果を調べる。

  群分けを厳密にしなければならない。

  そのために二重盲検試験が推奨される。

  しかし、効果があると思われる薬を投与しないということで、良心がうずく。

  また、もし「効かない」と思っているなら、これも良心がうずく。


 たとえ、このようにデザインして調査しても、その解釈はやはり人間に任されます。

 けっして、方法が理論の妥当性を保証するものではありません。