「おまえは、馬鹿か。そんなことで時間が分かるはずがないだろう。

 あそこの小学校の大時計が、修理中なのが見えないのか?

 どうして、狂った時計で時間が分かる?」


老いた漁師の話 その2

 時計の誤解で気まずくなり、男はその地を離れた。

 隣町の旅館に滞在することにした。

 ここは砂浜で散歩するにも具合が良かった。

 岩浜はごつごつしていたから、歩きづらかったのだ。

 人間は必ず年をとる。この浜にも年老いた漁師がいた。

 漁師は皆そうなのか、それともこの地方の特徴なのか、腰からラジオを下げ、古い歌謡曲が流れていた。

 男は近づいていき、声をかけた。

「良いお天気ですね。」

 年老いた漁師は、男の方に顔を向けることもなく、答えた。

「いや、もうすぐ雨になる。」

 そんなはずはない。こんなに晴れて気持ちの良い天気なのに・・・!

 男の頭の中のそんな考えを、声として聞いたかのように、年老いた漁師はゆっくりと立ち上がり、家の方に歩き出した。