二者択一

 「現在、デジタル・コンピュータが席捲し、その弊害として、『白か黒かだけで、灰色を認めない』人間が増えている」と言われます(じつは、わたしもそのように評価された人間のひとりです)。

 それはコンピュータの発達のためではありません。

 アリストテレス以来、ずーっと「科学」的思考にまとわりついてきた問題です。

 コンピュータのせいにしている人自身が、「原因はコンピュータか、そうでないか」しか考えていないのかもしれません。

 人間は同時に2つのことに注意を向けられません。

 ですから、2つのものがあれば、1つを選んだ方が考えやすくなります。

 しかし、それは「世界」がそのようになっているのではなく、自分が考えやすいようにニ者択一をしているのかもしれません。


 この「2つに分ける」考え方を、二元論といいます。

 アリストテレスは二元論の始まりを作りました。

 この二元論はデカルトまで引き継がれました。

 デカルトは、科学革命の時に、物事を2つに分析することで、物理的な「世界」をうまく扱うことができました。

 しかし、生き物の「世界」では、二元論は単純すぎました。

 生物は白黒の2種類ではなく、カラフルな世界に生きています。

 ときには、一人の人間の中に「まじめな人」と「ひょうきんな人」が共存しているのです。

 アリストテレスが「科学的に」と考えて採用した「二元論」が、人間をゆがめて見せているとコージブスキーは感じました。