コンテンポラリー・ダンス

マーガレット・ドゥブラー
 キネステティクの創始者のフランク・ハッチはモダンダンサーでした。

 モダン・ダンスは正確にはコンテンポラリー・ダンスと呼ばれます。

 「当世風のダンス」という意味です。

 現代というものは時間とともに変化しています。

 「たまたま今の時代に行っているダンスだよ」という意図でコンテンポラリーと言うのです。


 フランク・ハッチは、ウィスコンシン大学のK.U.スミスのもとで、行動サイバネティクスの研究をしていました。

 その行動サイバネティクスが、「キネステテイクス」のもとになりました。

 そのウィスコンシン大学は、ダンスで有名です。

 アメリカで最初に、女子のためのダンス学部が作られました。

 初代教授が、マーガレット・ドゥブラーです。フランクは「マージは・・・」と話します。

 最初は誰のことかわかりませんでしたが、マーガレットの愛称でした。
 
 フランクは、ドゥブラーが退官する前の2年間、ウィスコンシン大学でともにしました。

 お互いに影響を受けているようです。

 キネステティクには、モダン・ダンスが影響し、ドゥブラーのダンス理論には、サイバネティクスが影響しているようです。


Dance

Margaret H'Doubler
 1940年

(邦訳は
現代舞踊学双書1
「舞踊学原論」)
 正直に言って、邦訳の「現代舞踊学原論」は、題名から想像されるように、わたしには読みにくいです。

 翻訳された年代の影響でしょう。

 1950年代に原著が改版されたときに、初版にはない前書きが加わっていますが、この前書きは、邦訳の「現代舞踊学原論」には翻訳されていません。英語の原著でしか読めません。(左のアイコンをクリックすると・・・)

 ドゥブラーがダンスの教育をする理由は、優れたダンサーを直接養成することではありません。

 ドウブラーは次のように言います。


 ダンスを教えることは、『自分がダンスで表現できるということ』を教えることである。

 ダンスで表現できる人は、他の人のダンスを理解できる。

 つまり、ダンスを教育することは、他人を理解することを教育できる。

 そして、良い観衆を養成できる。

 良い観衆がいれば、そのフィードバックにより、ダンサーはよりよいダンサーになれる。

 つまり、良い観衆を作り、その観衆が良いダンサーを作るために、ダンス教育がある。


ダンサーは観衆から学習する
のです。

 ダンス教育は、「良い観衆」というダンサーにとっての環境を準備することです。

人間は環境となっている人間の行動から学習するのです。

 じつはこの主張は、行動サイバネティクスで言うソーシャル・トラッキングなのです。

 周りの人々からの反応により、自分の存在に気づくのが、「人間」の学習です。

 同じことは、子どもや老人、病人の動きを介助するときにも、言えます。

 つまり、人の「動きを介助すること」は、「学習の環境を提供すること」です。