
欠損が真皮より深いところまで及ぶと「深い傷」になります。
脂肪層には血管は多くありません。
血管がないので基底細胞が伸びるための栄養も酸素も不足です。
「浅い傷」のようには治りません。
損傷を受けた組織の中から表面に線維芽細胞が出てきます。
そして、線維を作り、その線維を伝わりいろいろな細胞が集まり肉芽組織を作ります。
肉芽組織に厚みが出ると、表面では酸素が足りなくなります。
酸素欠乏になった細胞から血管新生因子が出され、肉芽の下の組織から肉芽の中に血管が入っていきます。
肉芽の中の線維芽細胞が最初に特殊な線維を作ります。
この線維は作られた後、コイルのようにねじれて縮みます。すると、肉芽は縮小します。
肉芽が縮むと、傷の両端が寄ってきます。
最終的に傷の縁が1センチくらいに近寄ると、基底細胞が肉芽の上をなんとか覆います。
そして、表皮を作ると傷はふさがります。
両端が寄ると肉芽の中で作られる線維は普通のコラーゲン線維になります。
固く両端を保持します。これが瘢痕です。
瘢痕には血管が少ないので、基底細胞は伸びて行けません。
「深い傷」は瘢痕を作って治ります。
その瘢痕の上には真皮はなく表皮だけがあります。
ですから、瘢痕の表面はぴかぴかして薄っぺらな感じがします。
もし、広い範囲に瘢痕ができると、基底細胞層は伸びていけませんから、いつまでも治らない傷になります。
瘢痕の上に薄い表皮が張っているけど、すぐに剥けてしまうというときはそのような状態です。
「浅い傷」と「深い傷」の違いは、肉芽を作って収縮し瘢痕を作るか否かです。
「深い傷」の治癒が完了するためには、肉芽が収縮しなければなりません。
つまり、治癒にかかる時間は傷の大きさと、その人の肉芽を作る能力(動き、栄養、呼吸、心肺機能など)に大きく影響されます。
最初のお見せした前腕の欠損創の経過をよく見てください。
肉芽が収縮して、両端の皮膚全層を引っ張ってくることがわかるでしょう。
「深い傷」で基底細胞層が役立つのは、最後に瘢痕の上を覆うときであることもわかるでしょう。
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