2時間ごとの体位変換

 AHCPRのガイドラインでは、褥瘡をpressure ulcerと定義しています。

 圧力が主なる要因でできると認めています。

 というか、圧力が主なる要因だと思っていたのです

 副次的な要因として、ズレや擦れ、湿潤、栄養、意識状態の不良、運動性の低下をあげています。

 この「考え方」が褥瘡のケアについて、誤解を与えたと思います。

 褥瘡の主な原因は「動きの欠乏」です。

 
これについては、「キネステティクス的褥瘡ケアの解説」をお読みください。

 AHCPRが、予防用と治療用として出版した2種類のガイドラインの中の「強度」について詳しく見てみましょう。


エビデンスの強度
予防のガイドライン A. There is good research-based evidence to support the recommendation.

A. 上質の研究に基づくエビデンスがあるお勧め

B. There is fair research-based evidence to support the recommendation.

B. ある程度の質の研究に基づくエビデンスがあるお勧め

C. The recommendation is based on expert opinion and panel consensus.

C. 熟練した人々やAHCPRのメンバーの合意を得たお勧め

治療のガイドライン A. Results of two or more randomized controlled clinical trials on pressure ulcers in humans provide support.

A. 人間の褥瘡を対象とした複数の乱数化対照臨床試験の結果に基づく結果

B. Results of two or more controlled clinical trials on pressure ulcers in humans provide support, or when appropriate, results of two or more controlled trials in an animal model provide indirect support.

B. 人間を対象にした複数の乱数化していない対照臨床試験の結果か、複数の対照動物試験により間接的に証明される結果

C. This rating requires one or more of the following: (1) Results of one controlled trial; (2) results of at least two case series/descriptive studies on pressure ulcers in humans; or (3) expert opinion.

C. 以下のいずれかに該当するもの
  1) ひとつの対照試験の結果
  2) 人間についての複数の症例研究の結果
  3) 熟練した人々の意見



 「予防のガイドライン」と「治療のガイドライン」で、エビデンスの強度の規定が違います。

 「治療のガイドライン」が作られたときには、アメリカでは、「研究の量と質と、追試の数、所見のもっともらしさから決めなさい」という「エビデンスのガイドライン」ができていたからです。

 エビデンスについての説明のすぐ後に、次のように書かれています。、

 It is important to clarify that these ratings represent the strength of the supporting research evidence, not the strength of the recommendation itself.

 この分類は研究のエビデンスの強度を示すものであり、その見解の推奨の程度を示すものではないことをはっきりさせておくが重要である。


 つまり、これをもとに原著を読んで自分で判断しなさいということです。

 このエビデンスを見て、どのような判断をするかは、ケアや治療する人の自己責任だというのです。

 とても、フェアでしょ。ただのマニュアルとの違いがここにあります。

 ケアや治療する人が「判断する」というプロとしての責任を果たさなければならないのです。