ウスペンスキーと「第四の道」


 ウスペンスキーPeter.D.Ouspenskyは、1878年にモスクワに生まれました。

 子供のときから賢かったのですが、いわゆる「科学万能」の現代的考え方になじめず、より人間的なものを求めました。

 そして、神秘思想家として有名になりました。

 ウスペンスキーは「真理」を求め各地を旅し、1913年にグルジェフたちに会いました。

 ウスペンスキーはグルジェフに師事し、その教義を学びましたが、2年後にグルジェフのやり方に疑問をもちグルジェフの下を離れました。

 ウスペンスキーはグルジェフの進めてきた教育、「第四の道」The fourth way を推し進めました。

 これは共同体として生活しながら、その中でself-rememberingをトレーニングすることです。

 その方法として、瞑想やムーブメントと呼ばれる動きを使います。

 このムーブメントは体の各部を日常的ではない方向やリズムで動かします。

 つまり、自分を覚えていなければできない動きを求められます。

 ウスペンスキーがなくなった後、妻がウスペンスキーの著作をグルジェフに見せました。

 グルジェフが「ああ、ウスペンスキーはわたしの道を理解していた。 この本を出版してよい」と言いました。

 そして、出版されたのが、「第四の道」The Fourth Way---A Record of Talks and Answers to Questions based on the teaching of G. I. Gurdjieff ;London 1957, Routledge & Kegan Paul という本です。

 これは邦訳がありません。きっと、一般の人は買わないからでしょう。

 というわけで、Amazon.comで試し読みできる第一章だけ勉強のために翻訳してみました。面白いです。


第四の道

 裏表紙に書かれたの内容解説


 哲学

 「第4の道」は、故P.D.ウスペンスキーの教えた考えについてかつて出版された中で最も理解しやすいものです。

 1921年から1946年までの口演の逐語的記録からなる、G.I.グルジェフの教えの実践的側面を明確に解説しています。

 グルジェフが生の素材として提示したものを、ウスペンスキーはシステム的全体として纏め上げています。

 ちょうどTertium Organum が思考の新しいモードを扱ったように、「第4の道」では人生の新しい道を扱っています。

 ここでは通常の生活の中で従う内的発達の方法を示しています。

 世俗を離れて行なう3つの伝統的方法、行者、修道、ヨガとは異なる4番目の方法です。

 「第4の道」は今日の男女に開かれた内的成長の本当の方法を探す人々へのガイドです。

訳注 

 Tertium Organum(ターシャム・オルガヌム)は「第三の思考規範」と訳されています。

 アリストテレスの「オルガノン(論理学)」とフランシス・ベーコンの「ノウム・オルガノン(新しいオルガノン。本当なら新論理学のはずですが、「新機関」と邦訳されています)に次ぐ、「第三の論理学」という意味です。

 行者、修道、ヨガは悟りへの道です。

 行者は肉体に苦しみを与え悟ろうとし、修道士は一切の感情をコントロールする能力を得ることで悟ろうとし、ヨガは世界というものを知ることで悟ろうとする道を代表しています。

 これらは「日常生活」とは異なった世界に出ること、つまり出家や隠遁により悟ろうとします。

 しかし、これらの出家をせずに、在家のままで、日常生活の中で自分を覚えていること、つまり自分が何をしているかに注意を向けることで、悟ろうというのが「第四の道」のようです。

 これは出家せず在家で社会とともに悟りの境地に入ることを願う大乗仏教の考え方にとても近いと思います。

 ただ、3の法則、7の法則、エニアグラムなどの秘境的解釈が入ったのが、わたしには残念なところです。

 「解釈すること」が、実存から離れていったように見えます。

 では、次のページから第一章に入ります。

 この中にある「人間」に対する考え方を一例として読むと参考になります。