地図の地図を作ることができる寄り道

 たとえば、「言葉とは記号である」と定義したとします。

 このときの「言葉とは記号である」という文自体が言葉です。

 「言葉は記号である」ということが、言葉で定義されています。

 これは大変複雑で面倒な問題を引き起こします。

 聖書に「『クレタ人は嘘つきである』とクレタ人が言った」ということが出てきます。

 これは矛盾を引き起こします。

 問題を簡単にするために、「この文章は嘘である」という文章について考えます。

          

 この文章は「嘘」でしょうか?

 もし、これが「嘘」なら、「嘘」と述べたことで、嘘でないことになります。

 しかし、嘘でなければ、「『嘘である』と述べていること」で、「嘘」になります。

写真はEncyclopedia of Marxismより

 バートランド・ラッセルという数学、哲学、論理学者は、「記述には段階があるので、最初の嘘と後の嘘は同じものではない」と主張しました。

 階型理論
と言います。

 ラッセルの主張では、「この文章は嘘である」という記述は、記述の階型が異なるものを一緒にしているので、真偽が定まらないから論理学の中で存在を許されないことになります。

 ラッセルは「数学原理(プリンキピア マテマティカ)」という本を書いていました。

 しかし、このパラドックスを解決するまでの2年間は執筆が止まったと言います。

 ラッセルは階型理論を主張することで論理体系の正当性を保持しました。

 1913年に「数学原理」を出版しました。

 ところが、これで問題は解決しませんでした。ゲーデルという天才が出てきました。
ウィトゲンシュタインの「哲学探究」で寄り道
ゲーデルの不完全性定理