話を戻します。応力に注目されるまでは、「マットレスが皮膚を押す圧が皮膚の下の組織の血流を低下させて、褥瘡を作る」と考えられていました。

 左の図は「褥瘡の予防・治療ガイドライン(昭林社)」の中にあった図です。

 この図だけが出ていて、解説らしき文章は見られません。

 これが誤解を生みます。

 この図の原典は別にあります。

 英文の原著を読むと、この図は圧のかかり方を説明したものではなく、「褥瘡の組織損傷は深いところほどひどい」ということを示していました。

 その説明の図としても、この矢印は意味不明ですが・・・。

 しかし、この図だけが一人歩きし、まるで皮膚を押すマットレスが組織損傷の原因であるかのように教育されています。

 力学を考えれば、この図を「圧力」として考えるのは誤りだとすぐ気がつくでしょう。

 医学者や、看護学者は気がつきませんでした。

 ですから、未だに「体圧」というものが重視され測定されます。

 本当は皮膚表面の圧(接触圧)も剪断応力も組織内部の応力を直接は反映しないのです。

 左のイラストで圧力を赤の矢印で、応力の高いところを青の●で示しました。

 上のイラストと矢印が反対向きなのがみそです。

 応力を考えると、表面は発赤だけなのに、後日、皮膚が壊死して、骨が見えてくる褥瘡があることが理解できます。

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