感覚の延長

箸を使ってご飯を食べる。ご飯粒が潰れないのなら、あなたは箸の先のご飯粒の軟らかさを感じている。
硬い箸の先の軟らかさを感じる。触覚が延長している。感覚の延長である。脳が指や体からくる感覚の演算をして統合しているからできる。乳児のときから感覚の延長を学習している。
近視の人はメガネをかける。凹レンズのために対称物は小さく見える。馴染むと違和感がなくなる。二重焦点だろうと気にならなくなる。遠近感も保たれる。視覚が延長している。脳は学習する。
難聴になると補聴器をする。馴染む。聴覚が延長する。脳は学習する。盗聴器を使う人がいる。録音機を使う人がいる。聴覚が空間的時間的に延長している。もちろん、脳はその音がどこでいつかを知ることができる(ヒト以外には理解は困難であろう)。脳は学習している。
匂いと味については感覚の延長は思いつかない。将来、機器が開発されるかも知れない。
感覚が延長することは、自分の感じる範囲が広くなることである。体が大きくなると同じことである。

いわゆるバーチャルアリティは、感覚の延長を利用する。感覚の延長を学習したオトナには遊びである。しかし、感覚の延長を学習していない子供にバーチャルリアリティを与えることは、これから学習する感覚の延長を邪魔するかも知れない。
オトナは、自分が今ここで子どもに何を与えているかを考えたほうが良いと思う。なんでも売れればいいというものではないだろう?