わたしは北海道で生まれ育ちました。
あるとき、本州に旅行中、真っ暗な夜道を歩いていて、 「あっ、トイレのニオイだ」と思いました。
もちろん、現代の日本で道までトイレのニオイが漂うことはないのです。調べてみると、庭に生えているキンモクセイの香りでした。
北海道にはキンモクセイは自生していません。私が人生で最初にキンモクセイの花を体験したのは、その夜でした。しかし、キンモクセイの香りは50年以上前から体験しいました。トイレの芳香剤として出回っていたからです。わたしはキンモクセイを体験することなしに、キンモクセイの香りや名前だけを教えられていました(エステー化学、小林製薬のせいだっ!)。そこになんの疑問も持ちませんでした。アホですね。
実態を知らずに言葉(実態を代表するシンボル)だけを教えられていたのです。
子供に絵本を読み聞かせることが良いことだとして広がっています。良いことです。絵本の中の絵の実際を知っている子供にはね。
動物園で動物を観察していると、「あーっ、テレビで見たとおりじゃん」とか、「写真より汚いよね」とか「ほらっ、絵本で見たでしょ」と言う声が聞こえてきます。
わたしは「大馬鹿者!!!」と怒鳴ります。心の中でね。テレビは実態の姿や声の一部を見せたり聞かせたりしています。それはほんとうに一部です。映像や音声を実態と思ってはなりません。写真はきれいに見せています。お見合い写真で知っているでしょ、テレビのイケメンが悪いやつなのは知っているでしょ、かわいいアイドルがひどい待遇なのも知っているでしょ、動物はおしっこもするし下痢もするのですよ、あなたと同じようにね。
「絵本で見たとおり」というのは、わたしのキンモクセイと同じ体験です。しろくまの本態は凶暴な動物です。体重400キログラムを超え、メスはこぐまが大きくなるまで面倒を見ます。しかし、オスは生殖行為が終わると離れます。そして、再びあったときは、こぐまはオスの餌にしか見えません。こぐまを殺して食べます。そういう動物の絵を見せて「かわいいね」と教える。馬鹿でしょ。
しろくまの実態を見せて、「大きいでしょ、牙を持っているでしょ、肉を噛むときは力強いでしょ。」と教えてほしい。子供が北極に行き、しろくまに出会ったときに「かわいい」と飛びついていかないようにしてほしい。もちろん、「怖い」というのもだめです。「おっ、しろくまだ。避けよう」とゆっくり距離を置くのが良いです。
ヒトは体験から学習します。本物の体験が素晴らしい学習になります。言葉だけの抽象的な美化されただけの教育は、教えられた側の人生を歪んだものにします。
子供を育てるだろう人、子供を育てている人は子供にリアルな体験をさせましょう。まずは子供が生まれたらバイク一台買い与えるところから(それかいっ!)。