子供と老人の時間

子供にとって人生はとても長い。はやくオトナになりたいと思う。
老人にとって人生はとても短い。人生はあっという間だったと思う。

子供の体験はとても少ない。これからの人生を考えるタネとなる体験は殆どない。子供にとって人生は未知のものである。境界のない無限の闇である。
老人にとって人生は過ぎ去った過去のことである。細部まで体験してきた。何をして、何をしなかったかの境界ははっきりしている。
子供には、将来の人生を考えるための「言葉」はない。自分の体験が少ないので「意味」のある言葉を持たないからである。聞かれたから考えようとしても、思いつく言葉は「今、ここ」のものではない。
老人にとって人生を語る言葉は、体験から意味を持っている。全ては過去のことである。「今、ここ」のことではない。

老人に過去のことを聞いて認知症の改善を図る人々がいる。よろしい。しかし、その時の老人の言葉を、ともに再現して行動するのなら、もっと、もっと、もっといい。

「なんでも、話を聞くだけでいい」ってものではないだろう?