期待不安と現実不安

 長い前置きでした。

 フロイトは、「不安」には大きく分けて2つあるといいます。

 現実に起こることに対する不安と、現実に根をおろしていない神経症の不安です。

 前者を「現実不安」、後者を「神経症的不安」と呼びました。


 たとえば、道を歩いていて、向こうから犬がやってきたとします。
 
 あっ、犬が来た。

 口を開けて、こちらに走ってくる。

 危ないから、逃げよう。


 これは、実際に起こっていることに対して、不安を感じて、行動を起こしたものです。

 これは理解できる現実不安です。


 しかし、道を歩いているときに、何もないのに考える人がいます。


 ああ、道は誰でも通る。

 犬も通るかもしれない。

 大きな犬が出てきて、噛みついてきたらどうしよう

 ああ怖い。

 

 これは現実に起こっていないことに対して、不安を抱いています。

 不安の対象となった犬は、目の前には存在しません。

 頭の中に作った犬に対して不安を抱いています。

 そして、現実には存在していない犬に対処するために、自分の行動を抑制するという病的な反応を起こしています。

 自分の中で起こったことに対して、自分の中で増幅し反応しています。

 このような不安が神経症的不安です。

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