期待不安と現実不安
フロイトの時代 7

 フロイトが生まれた時代、フロイトに悩みを持ち込んできた人々の生きていた時代が、少しおわかりになったでしょう。

 インターネットで、ドイツ、オーストリア、第一次世界大戦、第二次世界大戦などという言葉で検索すると、当時の政情をしめすサイトがいっぱいあります。


 それらの情報を読んでみると、フロイトの生きた時代は「不安」のいっぱいある時代だと気がつくかもしれません。

 さらに、フロイトは白板症(ロイコプラキア)という病気にかかっていました。

 これは、パイプを吸う人に多い病気で、口腔粘膜や舌の表皮の前癌状態です。

 生涯に33回の手術を受け、最後は安楽死を希望したといわれています。

 二度の世界大戦に挟まれ戦争ばかりしている時代、大ドイツを目指す国家とキリスト教会が結びつき厳しい道徳を求めた時代、国さえも隣の国に占領されてしまう時代。

 そして、診察を受けに来るのは、そのような社会の中で強い不安を持つ、神経症の人々。

 自らの国でも少数派のユダヤ人であり、優秀でも社会から冷遇され、ナチスの迫害を受けたフロイトにとって、「不安」というものは、とても興味深いものでした。
 
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