期待不安と現実不安
フロイトの時代 1

 ここでフロイトが活躍した当時のドイツの歴史を振り返ってみます。

 「歴史なんて退屈なだけだ」と思うでしょう。

 しかし、フロイトの考え方という「図」を理解するには、時代という「地」を知ることがとても大切です。



 1856年、フロイトはチェコのフライベルクでユダヤ人として生まれました。

 1860年、フロイトはオーストリアのウィーンへ移住し、オーストリア人になります。

  当時、プロイセン王国とオーストリア帝国がドイツ連邦を形成していました。

 オーストリアを含めて統一しようとする大ドイツ主義と、オーストリアをはずして統一しようとする小ドイツ主義が対立していました。

 オーストリアはドイツ連邦の盟主でしたから、大ドイツとしての統一をねらっていました。しかし、・・・。

 1862年、オーストリアとともにドイツ連邦を作っていた隣の国のプロイセンの首相、ビスマルクは議会を相手に次のように語ります。

 「ドイツがプロイセンに注目しているのは、その自由主義ではなく、力なのであります。

 ドイツの統一という大問題は、言論や多数決によってではなく、鉄(武器)と血(兵士)によってのみ解決されるでありましょう。」

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