超自我と神経症

 では、神経症と神経質の違いはどこにあるのでしょう?

 フロイトはおもしろい答えを提示しています。

 神経症か神経質かという答えは、本人の中にはありません。


 ある人がドアに鍵をかけたがどうかを確認することをとても気にするとしましょう。

 この人が、家を出た後、鍵をかけたか心配になってバス停から戻って確認するとします。

 確認した後、安心して会社に行き、仕事を終えて帰ってくれば、神経質な人です。

 しかし、確認した後、また心配になり、戻ってくることを繰り返し、会社に行かなければ神経症です。

 つまり、神経質という正常な気質と、神経症という病気の区別は、本人の中にはなく、社会が迷惑するか否かにあるというのです。

 フロイトは病気は体の一部が変質することではなく、社会とのインタラクションに不具合が生じたことだというのです。

 人間は周囲とフィードバックの繰り返しで生きているというサイバネティクスの考え方そのものです。

 この点からも、フロイトは画期的天才であったと思います。

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