実は「日の名残り」である夢は特殊な例です。
たいていの夢では、きっかけとなる事柄ははっきりしません。
無意識の真っ黒い海の中から、ぽこっ、ぽこっと泡のように浮かび上がってきて、小さな波を立てて、消えていきます。
ですから、「日の名残り」のように、簡単に解釈できません。
解釈できない夢の方が多いといいます。
では、「日の名残り」のほかに、手がかりはないのでしょうか?
「象徴」というものがあります。
人間は社会の中に生きています。
その社会には文化があります。
文化には言葉があり、その言葉で思考しています。
無意識の心は、抽象的な思考をできません。
ですから、文化として持っている抽象的な概念を表現するためには、具体的なものを使います。
フロイトは、性の抑圧が大きな問題だと思っていましたから、たいていのものを性に結びつけます。
たとえば、突き出たものは、男性の性的特徴を思い出させるから、男性の「象徴」であるといいます。
棒、鍵、蛇などは男性を現すといいます。
もちろん、ネクタイや、シルクハットなどは典型的な男性の象徴です。
へこんだものは、女性を示します。
地面のくぼみ、巻き貝の殻、壁の穴、何でもへこんでいれば、女性を示しているかもしれません。
もちろん、女性特有の衣服や下着は女性を示します。
権威を示すものは、親かもしれません。
王様、官庁、先生などです。
小動物やペットは自分より小さい兄弟や、友人かもしれません。
このようなものを抽象的なものの象徴と解釈して、夢を分析することができます。
しかし、夢では論理的な思考がされません。
解釈する人によって、夢の解釈は違うものになるでしょう。
一人一人の文化が違うことを考えると、自分で自分の夢を解釈するのが、妥当かもしれません。
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