エレン・ソロウェイ フェルデンクライスメソッド・セミナー


 2005/03/27 フェルデンクライス・ジャパンの主催でエレン・ソロウェイさんの「理学療法士のためのフェルデンクライス・メソッド」というセミナーが開かれました。

 その1週間前には一般向けのセミナーが行われたのですが、わたしは、ほかのセミナーをやっていたので、それには参加できませんでした。

 フェルデンクライス・ジャパンのかさみさんに「ドクターは駄目でしょうか」とメールしたら、「かまいませんよ」と返事がきたので、申し込みました。

 北海道ではフェルデンクライスメソッドを知っている理学療法士には会ったことがありません。まだ理学療法士には知られていないと思っていました。

 「セミナーは定員まで集まるだろうか」と内心思っていたのですが、当日は「早くから定員になったので、あとからのひとは断った」と、聞きました。

 会場には1時間以上前に到着し余裕でした。

 かさみさんと「ご無沙汰してました」と挨拶し、8月に予定されている褥瘡学会のプレコングレスセミナーの会場準備のことを打ち合わせ。

 ellen and me会場にすでに来ていたエレンさんに紹介してもらいました。

 レッスンが始まりました。

 まず、二人でペアになって、立ってお互いの体がどのように重さをかけているかを感じます。

 相手の体の緊張を知るところから開始です。

 それからATM。

 フェルデンクライス・メソッドは、多くの場合、マットの上に仰臥位になって自分の体をチェックするところから始まります。

 今回もそうなりました。

 「自分の体のチェックをしても、そんなに変わらない」と、かつてわたしは思っていました。

 しかし違うのです。

 毎回、違うこともさることながら、毎回、自分のチェックする能力が高まります。

 「体をチェックすること」も能力ですから、繰り返すと感度が高くなります。

 そして、感度が高くなると、日常生活でも「気づく」事が増えてきます。

 体をチェックするうちに自分の緊張に気づき、そこの緊張を止めると楽になります。

 両膝をまげて、両足を立たせます。それから、右足を動かします。

 この辺の実際は「フェルデンクライス・ジャパン」からCDが発売されるでしょうから、そちらを購入して学習してください。

 わたしはハウツーではなく、自分が「感じたこと」と「考えたこと」を紹介します。

 まず、右足だけ「感覚」を思い出します。

 「ああ、自分の足にはカカトがあるし、ユビがあるんだった」と思い出します。


 さらに、「そうだ、足で『踏む』ということは、ただマットを押し付けるのではなく、ユビ、ユビの根元、外側、カカトの外側、カカトの中、カカトの内側、足全体といういろいろな部分でマットを押すことなんだ」と思い出します。

 自分の足の「構造=解剖」を忘れていたこに気づきます。

 自動車にはギアがあって、ギアチェンジすると速く走りやすくなります。

 もし、ギアの存在を忘れていると、いくらアクセルを踏んでもスピードは上がりません。

 エンジンが焼けてしまいます。

 足の「構造」を思い出すことは、ギアの存在を思い出すことです。

 ギアがあると分かれば、ギアチェンジできるようになります。

 足の構造が分かれば、足を「上手に使う」ことができます。

 「体の構造」を思い出すきっかけとしては、「大きな動き」や「強い動き」は不適切です。

 
100メートル走やマラソンでは「足の構造」に気づけません。

 ゆっくり歩くか立っているときには感じやすくなります。

 さらに、「動くか動かないかの小さな動き」または「動きを想像する」と「違い」に気づくかもしれません。

 このようにして、午前中2時間半近くを、ただ右足を小さく動かすことに当てました。

 足の動きが体全体、頭の中まで伝わるように感じ、体全体の緊張が緩んでいきます。

 顎の関節の緊張が低下するので、口の中の右半分だけ広くなったように感じます。

 こういうことがあるから、顎関節症の人にも効果があるのです。

 でも、「理由」をつけて医療にすると、「効果」が一定でないので非難されます。

 「自分の体に何が起っているのか」を分からない人や医者が多いのです。

 参加者が昼食に出て行くときに、エレンさんとお話をしました。

 ゆっくりと話されるので、リスニングの苦手なわたしにはありがたかったです。

 病院に勤めたことはないけれど、病院に行って子供たちの指導をしたことがあり、大変効果的だとのことでした。

 また、アメリカでは理学療法士の半分はフェルデンクライス・メソッドを知っているとのことでした。

 わたしがキネステテイクスを広めようとしていることを話し、「自分の病棟で、わたしが回診の時に患者さんと一緒に動いて、楽な動きを見つけるように指導しても、ナースや理学療法士がボディメカニクスで指導すると効果が薄い。

 結局、環境としての医療従事者の教育が必要と感じる」と話すと、エレンさんも同じに考えているといい、「午後からはそれに役立つことをする予定なの」と言いました。

 お昼を食べて、眠くなる前に午後のレッスンの開始です。

 たっぷりATMをやりました。

 「では、ゆっくりたちあがって、歩いてください」といわれ、立ち上がると、多くの参加者がふらふらして右と左の体の「違い」を感じます。

 「このままでは不便でしょうから」といって、二人一組になって、一人が椅子に座るようにいわれました。

 もう一人は椅子にすわった人の、足、下腿、大腿、腰の緊張をチェックします。

 もちろん、足のユビに力を入れるだけでも、「全体としての人間」が反応しますから、どこにでも動きは伝わって行くのです。

 そして、「では、座っている人の足を動かして、重さが足にかかるようにしてください」といわれました。

 これが参加者の理学療法士には分からない表現になります。

 参加者から「お手本を見せて欲しい」と言う声があがります。

 しかし、エレンさんは「後で見せます。

 今は自らが見つけてください」と言いました。

 試行錯誤と発見による学習なのです。

 このサイトの最初のページに書いてあることです。

 わたしのパートナーになった女性は、富山の理学療法士さんで、正式のフェルデンクライス・メソッドのセッションは受けたことがないといいます。

 確かに、動かされていても、動きにメッセージがないので、楽になりません。

 しばらく、されるままにしていました。

 「では、今度はわたしにやらせてください」と言って、交代しました。

 わたしは午前中からのATMで、感じていたことがありました。「これはダンスの足だ」と思っていたのです。

waltz_steps_dancing わたしがダンスを教わっている美智子先生は、「ダンスの達人は足の裏の9ヶ所で支えていることを感じるといいます。

 
でも、わたしは7ヶ所しか感じないけど」と言っていたことがありました。

 このセミナーで感じたのは、「9ヶ所がある」ということです。

 この9ヶ所を感じやすいように、狙ったところに「重さ」がかかるようにパートナーの足を動かしてあげます。

 さらにその「重さ」にわたしの「重さ」が加わるように、わたしの体全体を動かします。

 相手の足の動きとわたしの体全体の動きをいっしょにします。

 そして、パートナーに椅子から立ってもらいました。

 「あっ、軽くなった」と言いました。やったね。

 ほかにも、いろいろなことをやりましたが、割愛。興味のある人は、次回のセミナーを逃さないようにしましょう。

 しかし、かさみさんは「数が多くなると目が届かなくなるから、次回は参加者を減らそうと思う」と言います。

 普通は、参加者を多くすることを狙うのですが、かさみさんは商売より、教育を優先しています。

 病院に戻って、翌日、病棟に作業療法士の森君が来ました。森君は認知行動療法のセミナーに行ったこともあり、キネステティクスにも理解を示しています。たまたま、「歩く」ことについての話になり、フェルデンクライスの話をしました。

 「ちょっと、そこに座ってみて」といい、森君の足に「気づき」を与えてあけました。

 椅子から立ったときに、森君は「えっ、なに、これ!」といって驚きました。

 わたしが受けたセミナーとわたしが考えたことを教えました。

 1週間後、施設へ写る予定の患者さんのリハビリを確認に、リハビリテーション室に施設の人とともにいきました。

 その患者さんは、右半身の麻痺で入院していました。

 まだ、立ち上がりのバランスが不安定で、歩行の難しい人でした。

 リハビリテーション室に行くと、その患者さんが片手のT字杖で歩行練習しています。

 「なにっ?!」歩行器を省略してT字杖になるはずはない患者さんです。

 森君がその患者さんの足に「気づき」を与えていたのです。

 わたしは森君の足に「気づき」を与えることには気づいていましたが、その患者さんに効果があるかもしれないと、気づいていませんでした。

 森君は、その患者さんに「気づき」をあげられるかもしれないと、毎日、リハビリテーションの時間に刺激していたのです。

 というわけで、セミナーの後まで、「気づき」をうける良いセミナーでした。

 エレンさん、ありがとうございました。


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